【3月5日 AFP】カザフスタンの最大都市アルマトイ(Almaty)に住むクララ・イマンガリエワさんは、先月起こった地震と余震でトルコとシリアが受けた被害を知ると、すぐにでも引っ越さなければならないと思った。

「私たちも危険だ」と語る。現在は高層住宅の9階に住んでいるが、地震が起きた時、少しでも生き延びる可能性が高い平屋に引っ越したいと考えている。

 人口約200万人のアルマトイはカザフスタン南東部の地震活動が活発な地域に位置しており、小規模な地震は珍しくない。

 1887年、1889年、1911年には大地震があり、当時ベルヌイ(Verny)と呼ばれていたアルマトイはその都度、壊滅的な被害を受け、再建を余儀なくされた。ここ100年ほどは大きな地震は起こっていない。

 4万5000人以上の死者が出ている2月のトルコ・シリア地震を受け、旧ソ連構成国のカザフスタンでは大地震への懸念と、過去と現在の建設会社への不信感が再燃している。

 建築家のアルマス・オルダバエフさん(84)は「耐震補強されていない1950年代以前の建物は全て、今回トルコで起きた規模の地震には耐えきれないだろう」と話した。

 さらに、ソ連崩壊後の建築物は信用できないと指摘する。「腐敗し、基準に従っていない業者が1990年代に建てた建物がどうなるか、大地震が起きれば分かるだろう」

■当局への教訓

 複数の断層があり、過去にも大地震に見舞われたことがあるトルコでは、今回多くの建物が倒壊したことから、建築基準が不十分だったとの批判が噴出している。

 オルダバエフさんは「トルコの地震がカザフスタンの当局と建設業者に対する教訓となってほしい」と話した。

 カザフスタンは地震活動が活発な地域が国土の11%以上を占めており、域内の人口は500万人以上とされる。

 アルマトイの地震研究所の副所長ヌルサレン・ウズべコフ氏によると、国内では過去5年で約4万回の地震が観測された。揺れを感じる規模の地震は年平均9〜15回発生しているという。

 ただ、専門家はカザフスタンには十分な地震観測所がなく、設置されている地震計の多くはソ連時代のものだと指摘している。

■中央アジア諸国に広がる不安

 カザフスタン以外の中央アジアの旧ソ連構成国でも、早晩、地震による大惨事が起こるのではないかとの不安が広がっている。

 キルギス政府は、トルコ・シリア地震後に高層ビルの耐震調査を行うと約束した。

 ウズベキスタンの首都タシケントは1966年の地震で広範囲が破壊され、旧ソ連当局が街を再建した。

 当時13歳だったヌリジン・イブラギモフさんは、タシケントが「がれきの山になった」と話した。ソ連当局は実際の死者数を隠蔽(いんぺい)したという。

 トルクメニスタンの首都アシガバートは1948年の地震で壊滅的被害を受けた。20世紀で最も死者の多かった地震の一つで、推定10万人が死亡したとされる。

 世界有数の秘密主義国であるトルクメニスタンの政府関係者はAFPに対し、今日では「建物の安全性を保つために必要な対策」を講じていると話した。(c)AFP/Bruno KALOUAZ and AFP Central Asia correspondents