【2月21日 AFP】片や旧ソ連国家保安委員会(KGB)の元諜報(ちょうほう)員。冷酷な独裁者として、権力の座に20年以上とどまっている。片や、コメディー俳優から政治家へと華々しく転身。大統領就任から3年とたたないうちに、「戦時指導者」を自認するに至った。

 強権的指導者であるロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領(70)と、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領(45)。第2次世界大戦(World War II)後の欧州で最悪の紛争となったウクライナを舞台とする戦争で、両者は対峙(たいじ)している。

 ともに旧ソ連生まれ。ただし年齢は25歳離れている。ソ連崩壊後の世界における正反対の価値観をそれぞれ体現する旗振り役となった。

 プーチンにとって、ソ連崩壊は災厄だった。これを正さなければならないと決意するに至り、ロシアの影響圏にウクライナを取り戻すには核兵器に訴える必要もあると示唆している。

 一方ゼレンスキーは、ロシアからの軍事圧力や旧政権内にまん延していた腐敗に対する反発を追い風に、2019年の大統領選で地滑り的な勝利を収めた。

 同年、両者は仏パリで初めて顔を合わせた。エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)同国大統領、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相を交えての、ウクライナ東部で続いていた政府軍と親ロシア派武装勢力の衝突をめぐる4か国首脳会談の場だった。その際すでに、両者間の溝は疑いようのないものとなっていた。

 ゼレンスキーはおずおずとほほ笑みながらも、国際的なひのき舞台を楽しんでいた。プーチンにならい、カメラの列の方に向いて笑顔を見せる場面もあった。

 米シンクタンク、カーネギー国際平和財団(Carnegie Endowment for International Peace)のロシア政治専門家、アンドレイ・コレスニコフ(Andrei Kolesnikov)上級研究員は、「当時も今も、2人が根本的に対照的な指導者なのは明白だ」と話す。

「片方は現代的で若く、形式ばらない。関心の的は発展にある。もう片方は偏狭で古風、権威主義的だ。コンプレックスと常軌を逸した考えにとらわれている」