【1月26日 Xinhua News】中国甘粛省(Gansu)敦煌市(Dunhuang)にある世界文化遺産の莫高窟(ばっこうくつ)には、ウサギ3匹が追いかけっこをしながら2匹ずつ一つの耳を共有し、一見すると「ウサギ3匹に耳が三つ」の独特の図柄を形成する「三兎共耳」が見られる。

 中国の伝統文化で「三」は吉祥、完全、無限を表す。敦煌研究院考古研究所の趙燕林(Zhao Yanlin)副研究館員によると、莫高窟には三兎共耳の図柄が見られる洞窟が20カ所あり、最初に出現したのは隋の開皇4(584)年に開削された第302窟、最後に出現したのが五代十国時代の第99窟になる。

 三兎共耳は洞窟上部の藻井(そうせい、天井装飾の一種)で多く見られ、隋代中後期に開削された莫高窟第407窟の藻井は典型的な作といえる。図柄には、二重八弁のハスの花の中で、ウサギ3匹が耳を立てて懸命に追いかけっこをしている様子が見られる。

 興味深いことに、アフガニスタンの金属盤、モンゴルの銅貨、エジプトの陶磁器、ドイツの教会の時計、英国のタイル画などにも三兎共耳の図柄が見られる。では、三兎共耳の起源はどこなのか。これについては学者によって説が異なり、古代ギリシャから伝わったとする説やガンダーラ地方がルーツだとする説もあるが、最初に出現したのはやはり敦煌の莫高窟だとする説が主流となっている。

 趙氏によると、既存の資料を整理すると「三兎共耳」の図柄には「東が早く西が遅い」という時間的・空間的特徴があることが分かる。最も古いものは6世紀に敦煌で出現し、9~11世紀前後にシルクロードの中央アジア、西アジア地区に現れ、13~16世紀にエジプトと欧州各国に伝わった。

 趙氏は「シルクロードの文化交流を観察する上で、図柄は一つの視点となる。同じタイプの図柄がシルクロード沿いの時代の近い異なる文化の遺跡にしばしば出現しており、共通の文化的特徴を持つ図柄を整理、研究することは、古代シルクロード沿いの文化の交流・伝播の歴史を探る上で重要な意義がある」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News