【1月22日 AFP】ウクライナ東部ドンバス(Donbas)地方では、戦闘と厳しい寒さから、多くの夫婦たちは長い時間を狭い地下室の中で共に過ごさざるを得ない状況に置かれている。これにより絆が深まる人もいれば、関係がぎくしゃくする人もいる。

 オレクサンドル・ムレネツさん(68)と妻リュドミラさん(66)は侵攻以降、1日に2人で過ごす時間が、40年の結婚生活の中で最も長くなっており、あつれきが生じ始めている。

 ある朝、リュドミラさんが自家製ウォッカを作る際に必要な水の量を説明していると、ムレネツさんが「お前はしゃべり過ぎだ」とちゃちゃを入れた。

 こうしたいさかいは、採鉱の町シベルスク(Siversk)のアパートの狭い地下室に10か月も閉じこもるうちに日課になってしまった。かつて前線だったシベルスクは、激しい砲撃で町の面影がほぼ消え失せ、現在でも昼夜を問わず砲撃の衝撃音で窓が鳴る。

 侵攻以前は鉄道車両の修理工として働いていたムレネツさんは「以前は2人とも出勤して、顔を合わせるのは夜だけだった。今では口げんかが増えた」と話した。「ときどき『黙れ』と言うが、黙らないんだ」とうんざりした様子。

 複数回にわたりシベルスク制圧を試み、失敗したロシア軍は昨年夏、町にミサイル、ロケット攻撃を浴びせ続けた。

 ウクライナ軍はロシア軍を押し返す事に成功したが、町の民家や学校、工場は廃虚と化し、侵攻前に1万2000人いた住民もほとんどが去った。

 2人はいつミサイルが飛んでくるか分からない恐怖におびえながら、電話もなく、飲料水もほとんどない暮らしに耐えなければならない。熱源といえばまきを使うストーブだけだ。

 冬の寒さが厳しくなると、リュドミラさんはSF小説に心の平穏を求めた。本を読んでいる間は夫と口論しなくて済むからだ。

 リュドミラさんは天井を指しながら「私たちの部屋が近くて助かる」「簡単に他の本を取りに行ける」と話した。