【1月19日 東方新報】中国で最初のCtoC(個人間取引)のeコマースサイトとされる「易趣(Eachnet)」が昨年8月、プラットホームの運営停止を発表した。多くのネット民からは、「人生最初のネットでの買い物は易趣だった」「電話でネットにつないだあの時代が懐かしい」など撤退を惜しむ声が相次いだ。

 易趣は、ハーバードビジネススクールを卒業した25歳の若者、邵亦波(Shao Yibo)氏が1999年に友人と共に上海で創業。当時、世界最大のeコマースであった「イーベイ(eBay)」を模倣し、1年後には登録者300万人を抱える中国最大のeコマースに成長した。2003年には本家eBayの資本下に入るが、同年スタートした阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)の淘宝(タオバオ、Taobao)や、さらに後続の京東(JD.com)などとの競争に敗れ、後塵(こうじん)を拝してしまった。

 中国のeコマースの競争の激しさを物語るエピソードがある。

 初期の頃、易趣の主催するオフラインの販促イベントには、いつも淘宝の職員が紛れ込んでいた。易趣の取引先は、イベントのたびに淘宝の職員から名刺を渡され、その結果、多くが淘宝に鞍替えしいていったという。

 振り返れば、この10年は中国eコマースの激動期であり黄金期だった。 

 2012年から21年までの10年間で、ネット取引での小売の売上額は1億2600万元(約24億471万円)から、13億1000万元(約250億135万円)と約10倍に成長した。

 2012年は中国のeコマースを大きな転換点だった。アリババグループは2009年に、1が並ぶ11月11日を「独身の日」と称し、大幅な値引きで販促キャンペーンを始めた。その3年後の2012年、アリババの成功に目をつけた京東、蘇寧易購(Suning)など複数のeコマースプラットホームが、「独身の日」に相乗りして、割引合戦に参加したのだ。おかげで「独身の日」は若者を中心とするeコマースの消費者にすっかり定着し、2021年にはアリババグループの天猫(Tmall)と京東の取引を合わせると9億元(約172億円)近くに達したという。

 ただ、eコマースはすでに飽和状態に近づいたのではないかという指摘もあり、今後、これまでと同じような成長は必ずしも見込めない。

 これまで専門分野に特化したeコマースサイトも多数誕生したが、最近は苦戦を強いられている。eコマースの勝敗の鍵は、品ぞろえの豊富さにあるが、その点において多種多様な品ぞろえが可能な大規模な総合eコマースとの競争に勝ち続けるのは困難だ。中国でベビー商品に特化したeコマースの先駆けとなった「密芽(Mia.com)」も、すでにサイトの閉鎖を決めた。密芽の創業者でCEOの劉氏は、サプライチェーンの構築や消費者の教育といった点で専門店eコマースが業界に果たした貢献に意義はあったとしながらも、大手の総合eコマースのアルゴリズム(計算方法)が、各人各様の要求に十分に答えられるようになった今は、専門店eコマースの時代は終わったとの認識を示す。

 前途は多難にも見える中国のeコマース。だが、これまで勢いと創造性を武器に世界が目を見張る発展を遂げてきた事実を考えれば、中国のeコマースが今後、逆境の中にありながらもいかに進化を見せるかが、むしろ楽しみでもある。(c)東方新報/AFPBB News