ナイル川、水量激減の恐れ 気候変動、開発の余波で流域諸国は死活問題に(1)
このニュースをシェア
【1月21日 AFP】古代エジプト王(ファラオ)が永遠の命をもたらす神としてあがめたナイル川(Nile River)。人間の活動に伴う気候変動や汚染、開発の影響で、危機に直面している。世界で2番目に長く、約5億人の生命線であるナイル川は、豊かな流れを維持できるのか。AFP取材班がエジプトからウガンダまでの各地で、衰えつつある現状を取材した。
【関連記事】ナイル川、水量激減の恐れ(2)進む塩害、頻発する停電
スーダン中東部のジャジーラ(Gezira)州アルティー(Alty)。ナイル川河岸で農業に従事するモハメド・ジョマーさん(17)は、「ナイル川は私たちにとって最も大切なもの。何も変わってほしくない」と話した。
しかし、ナイル川はもはや、神話の時代から変わることのなかった河川ではない。ここ半世紀の間に、平均流量は毎秒3000立方メートルから2830立方メートルに減少した。国連(UN)の最も悲観的なシナリオでは、アフリカ東部が今後何度も干ばつに見舞われれば、流量はさらに70%減少する恐れがある。
過去60年間、ナイル川河口に広がる肥沃(ひよく)なデルタ地帯は、地中海の海面上昇により年平均35~75メートルずつ後退してきた。国連によると、海面が1メートル上昇しただけで、デルタの3分の1が失われ、900万人が移住を余儀なくされる可能性がある。
ナイル川の最大の水源であるビクトリア湖(Lake Victoria)も、干ばつや蒸発などにより干上がるかもしれない。
こうした悲観的なシナリオを前に、流域各国は水の確保に躍起になっている。だが、専門家は、各地で建設されている新たなダムが、破滅的な事態の到来を早めていると警鐘を鳴らしている。