【1月28日 AFP】毎年1月になると、米国やブラジル、カリブ海(Caribbean Sea)諸国から、西アフリカのベナンを訪れるアフリカ系の人が増えている。目指すは、かつて大西洋奴隷貿易の拠点だった港町ウィダー(Ouidah)の浜辺で行われるブードゥー教の祭りだ。

 祖先の故郷と宗教の再発見を求めている。

 祭りを初めて訪れたというルイ・ピエール・ラマサミーさん(45)は、カリブ海東部のフランス海外県グアドループ(Guadeloupe)からやって来た。

「私たちはまず自分たちの起源を探し、母なる大地と再びつながるためにここに来る」と話す。ウィダーから奴隷に出された祖先の軌跡をたどり、母方の祖母が実践していた神聖を再発見したいという。「自分自身の成長のため、つながり直すことが必要だ」

 海の女神マミワタ(Mami Wata)に敬意を表する白い布をまとった一団。踊り手たちが夜の守護神に扮(ふん)して旋回する「ザンベト」の儀式を、カラフルな伝統服を着た信者が見守る。

 近くには、この浜辺から新世界(New World)行きの奴隷船に詰め込まれた人々をしのぶ記念碑「帰らざる門(Gate of No Return)」がある。

「私たちの祖先はアフリカ系子孫の帰還を予見していた。祖先の霊は待ち望んでいる」とブードゥー教の司祭の一人は語った。

「私たちの主な目的は、土着の文化が決して色あせないようにすることだ。遅かれ早かれ、すべてのアフリカ系子孫が戻って来る。私たちの祖先はそう言っている」

■「ここから来た」

 ベナンの社会学者で宗教専門家のフランシス・アウィスーシ(Francis Ahouissoussi)氏は、アフリカ人奴隷の子孫は「自分たちの真のアイデンティティーを永遠に探し求めている」と感じており、その答えの一部を担っているのがブードゥー教だと指摘する。

 ブラジルから訪れたアナ・ベアトリス・アルメイダさんは、自分がブラジルの神々と祖先を結びつけているように感じたという。「離散した祖先を持つほとんどの人は、こうした知識とつながることができると思う。ブードゥー教は人間性を見つめる視点だ」

 米国から来たチャスティルさんも、ベナン訪問は初めてだとAFPに語った。「たくさんの神々とたくさんのダンスを見た。私の家族はここにはいないけど、私たちは明らかにここから来たのだとどこかで感じる」 (c)AFP/Josue Mehouenou