奴隷貿易の暗い歴史、DNA研究で明らかに
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【7月27日 AFP】遺伝学的に残されたレイプの爪痕から、致命的な条件下で労働を強いられた人々が病気で滅びていった可能性まで、奴隷貿易の暗い歴史を明らかにする新たなDNA研究の結果が23日、米科学誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス(American Journal of Human Genetics)」に発表された。
この研究では大西洋を隔てたアフリカ大陸と米大陸の両方で、同意を得た5万人の遺伝子データを収集。それらと、1515~1865年の間に1250万人の男女と子どもたちを運んだ奴隷船の詳細な記録を相互参照した。この間、奴隷船に乗った人々のうち約200万人は途上で死亡している。
その結果、アフリカの人々が遺伝的に大きく関与している点は、歴史記録に基づいた研究者らの予想とほぼ一致したが、大きな例外がいくつかあった。
例えば、米大陸全体のアフリカ系住民の大部分のルーツは現在のアンゴラやコンゴ民主共和国にあり、これは主要な奴隷貿易ルートに沿っているが、米国のアフリカ系ではナイジェリアにルーツを持つ人が大きな割合を占めていた。彼らはカリブ海経由の大陸間奴隷貿易で連れてこられた人々だと思われる。
対照的に、アフリカ系米国人とセネガンビア(Senegambia)地域(セネガルとガンビア周辺の西アフリカ)との遺伝的つながりは、北米で奴隷船を下船した人数と比較して予想されていたよりも少なかった。これは下船後に北米のプランテーションで働いた奴隷の多くが、マラリアで死んだためという悲惨な理由が推測される。
調査に参加した集団遺伝学者のスティーブン・ミチェレッティ(Steven Micheletti)氏はAFPの取材に対し、「セネガンビア人はアフリカでは一般的に稲作を行っていたので、米大陸でも稲作のプランテーションへ送られることが多かった」「それらのプランテーションではしばしばマラリアが流行し、死亡率が高かったため、現在のアフリカ系米国人におけるセネガンビア人の遺伝的痕跡が少なくなっているのだろう」と述べた。