【12月20日 東方新報】新型コロナウイルスの陽性者が急増する中国で、「桃の缶詰がコロナに効く」「レモンも有効」というデマが流れ、ネット上やスーパーで買い占めが続く事態となっている。

 中国当局は今月に入り、これまでの徹底した感染防止策から重症者を中心とした治療措置に重点を置く方針を発表。陽性者が急増し、薬の買いだめが始まった。医療機関で診察を待つ行列ができ、薬不足が起きると、「桃の缶詰を食べれば新型コロナの症状が緩和される」というデマが広がった。

 日本でも一昔前は、風邪をひいた子どもに甘いシロップを漬けた桃の缶詰を与えるのが「定番」だったが、中国でも「病気の時、普段食べない桃の缶詰を親が買ってくれて、そのおいしさに病気が吹っ飛んだ気分になった」という経験を持つ人は多い。

 その集団的記憶もあってか、桃の缶詰はスーパーなどであっという間に売り切れた。オンラインサイト大手「京東(JD.com)」の12月14日の売り上げランキングで、加工食品部門のトップ5はすべて桃の缶詰製品だった。

 中国の缶詰メーカー大手・林家鋪子(Linjiapuzi)は「桃にはいかなる薬効もありません」「在庫は十分あるので急いで買わないでください」と声明を発表。中国共産党機関紙・人民日報(People's Daily)も「桃は新型コロナの症状緩和に効果がないので買いだめしないで」と呼びかけている。

 桃缶が品薄になると、今度はレモンの買い占めが始まった。ある大学病院の院長が「軽度なコロナの症状には、レモンをお湯に浸して飲むと良い」と発言したことがきっかけといわれる。レモンの売り上げが急増し、卸値は通常の2~3倍となっている。

 中国で流通するレモンの80パーセントを出荷している「レモンの都」四川省(Sichuan)安岳県(Anyue)には注文が殺到しており、あるレモン協同組合の責任者は「1日に60件以上、レモンを買いたいという電話があります。在庫はあるので大丈夫ですが…」と戸惑い気味だ。

 このほか、「かんきつ類はコロナに効く」として、スーパーやオンラインサイトではキウイ、オレンジ、ナシ、ココナッツなどの果物やジュースの売り上げも伸びている。

 2011年3月に日本の福島第1原発事故が発生した際、中国では「塩に放射性物質の沈着を防ぐ効果がある」とデマが広がった。この時も当局が「科学的根拠がない」と否定したが、塩の買い占め騒動が各地で起きた。中国では伝統的に「口コミ」を重視する社会だが、危機意識が高まった時はパニックを誘発する要因となってしまっている。(c)東方新報/AFPBB News