【12月15日 東方新報】中国に「奈雪の茶(NAYUKI)」という日本語の平仮名をそのまま使った店名の喫茶チェーンがある。黄緑色のロゴのデザインはしゃれており、清潔感のある店内でカラフルなフルーツティーやスイーツが楽しめる。店の名や雰囲気から、日本発のチェーンかと思わせるが、れっきとした中国ブランド。ところが最近、SNSのアカウントや一部の店舗でロゴが変わった。平仮名の「の」が同じ意味を表す中国語の「的」になり、「奈雪的茶」となった。アルファベットの表記も、もともとは「奈雪」の日本語読み通りにNAYUKIだったが、中国語での発音に従ったNAIXUEに変わった。

「奈雪の茶」は2015年に広東省(Guandong)深セン市(Shenzhen)で第1号店を開店、その「日本風」が受けたのか、今では各地のショッピングモールなどでよく目にするようになった。客層は若い女性が中心で、中国本土や香港で合わせて900店近くを展開しているという。「奈雪の茶」は今回の改名について「7周年を迎えたブランドの刷新であり、今後、徐々に各地の店名を更新する」と説明するが、日本語の「の」が中国語の「的」になった理由については答えていない。

 中国企業が「日本風」のイメージを払拭し、「中国化」する例はこれだけではない。飲料メーカー「元気森林(Yuanqisenlin)」も、日本風を前面に出した商品を販売し、会社のロゴには元々、日本語の漢字「気」を使っていたが、最近になって中国語の漢字「气」に差し替えた。

 中国ではこうした変化を、「脱日本」の一連の動きとして注目されている。

 そもそも中国企業が日本風を装っていたのには訳がある。
 
 中国では長く日本製品が崇拝されてきた。それは、2018年頃に日本で騒がれた爆買いブームでも明らかだ。炊飯器や温水洗浄便座、医薬品や化粧品まで、日本製品に対するイメージは高品質で精緻、安心安全だ。特に、豊かな時代に育って新しいライフスタイルを持つようになった若者たちには、日本の製品やサービスはマッチした。中国企業のいくつかは、そうした日本のイメージを利用し、消費者の信頼を得ることに成功した。

 ところが、近年は国産品も質が向上した。消費者は日本製をはじめとする外国製品をむやみに称賛するようなことはなくなり、国産品にも目を向け始めた。むしろ中国ブランドにプライドさえ感じるようになった。企業にとって、日本のイメージを打ち出すより、中国企業であることを強調した方が得な時代になったということなのかもしれない。

 最近、「脱日本」を宣言した企業の一つに「名創優品(メイソウ、MINISO)」がある。日用雑貨を安価に提供する店で、日本の100円ショップに近い。当初からロゴのデザインは「ユニクロ(Uniqlo)」、商品は「無印良品」のパクリのようだと指摘され、ポスターなどには「FROM JAPAN」「Japanese Lifestyle Brand」などとウソなのか何かのレトリックなのかよく分からない宣伝文句が堂々と書いてあったが、今や海外に出店するほど成長した。

 この「名創優品」が「脱日本」を宣言したきっかけは、同社のスペイン語のSNSで、チャイナドレスを着た自社製品の人形を「日本の芸者」と紹介したことだった。中国企業にもかかわらず自国の文化を軽視したかのように受け止められたのだ。さらに同社が外国の企業との業務提携の調印式の席で、日本の国旗をかけていたことが判明。株価が急落するなど消費者の反感を買った。

 これを受け「名創優品」は、日本を売りにしてきたこれまでの経営方針について謝罪。正真正銘の中国企業であり、今後は日本的な要素を取り除くなどと宣言した。

 騒動を「脱日本」宣言で乗り切ろうとした「名創優品」だが、現在、業務協力した会社から製品やその製造方法などの特許を侵害されたと訴えられ、2000万元(約3億8933万円)の損害賠償を求められているという。同社が特許をめぐって起こされた訴訟はこれが初めてではない。

 結局のところ、問題の本質は「日本風」を残すか無くすかではなく、それぞれの企業が消費者に信頼される倫理観を持って、自前のブランドの信用を一歩一歩築いていけるか否かだろう。(c)東方新報/AFPBB News