【12月14日 東方新報】ゼロコロナ政策が徐々に緩和されている中国で映画館の営業が各地で再開され、にぎわいを取り戻している。

 北京市では12月7日に映画館の営業再開を許可する通知を出し、これを受け取った映画館が順次再開を発表している。全国では11日現在、73.6%の映画館が営業を再開している。

 北京市の映画館「首都電影院」の于超(Yu Chao)副総経理は「観客側が映画館に入るための敷居は確かに下がったが、映画館側が感染防止のために守るべき要件は決して減っていない」と説明する。

 具体的には、映画館内の消毒を毎日継続し、観客数を座席数の75%以内に保つルールを守っていくことになるという。観客は入館時に体温検査とグリーン健康コードの提示が必要。PCR検査の陰性証明は不要だが、上映前後を含めて飲食は禁止でマスクを外すことはできない決まりだ。

 しかし、映画館の再開を知った中国の映画ファンは16日に公開される『アバター:ウェイ・オブ・ウオーター(Avatar: The Way of Water)』のチケット予約に殺到している。11日現在のチケット予約は1億元(約19億4480万円)を超えて、1席350元(約6806円)の高価な座席から埋まっていくという。

『アバター』のほかにも『ONE PIECE FILM RED』や『名探偵コナン ハロウィンの花嫁(英題:Detective Conan The Bride of Halloween)』など日本の人気アニメ映画やフランス映画の定番『コーラス(Les Choristes)』を再開第1弾の作品として上映する映画館が多い。

 それにしてもゼロコロナ政策下で映画やドラマを大量に見ていたといわれる中国の人たちは、なぜ再開された映画館に押し寄せるのか。

 中国のネット上では「行動制限が急に緩和されても旅行や会食はまだ怖い。黙って見る映画なら比較的安心」「スマホやタブレットでの小さな画面での長時間視聴に飽きた」「暗い映画館は久しぶりのデートにもよさそう」などと推測が出ている。

 理由はともあれ、各地で倒産の危機が取り沙汰されていた映画館がにぎわいを取り戻したことは、おおむね歓迎されているようだ。

 中国国内のシンクタンクによると、2023年の中国国内映画館の総売上は約547億元(1兆638億円)とコロナ禍の影響がなかった2019年の85%程度まで回復すると予測されている。

 北米と肩を並べる映画市場となった中国。その市場の回復はコロナで大打撃を受けた世界の映画界の復興を左右しかねない。当面、ゼロコロナ明けに上映されることになった『アバター』が中国でヒットするかどうかに注目したい。(c)東方新報/AFPBB News