【11月17日 東方新報】中国では2020年頃から、「臨期食品」と呼ばれる賞味期限が近い食品のディスカウントストアが急速に増えている。一時はブームとなり注目を集めたが、過当競争による商品不足やトラブルも発生し、わずか2年で曲がり角を迎えている。

 臨期食品のディスカウントストアでは、ポテトチップスやビスケットなどのスナック菓子、インスタントラーメンやジュース、外国産のビールやワイン、レトルト食品などが通常価格の半額以下、商品によっては1割程度で購入できる。賞味期限は1~3か月残っているものが大半。「通常は10元(約197円)のポテチが2元(約39円)で買える」「買い物かごいっぱい買っても100元(約1975円)未満」などと評判となり、主に20~30代の若者層をひきつけている。上海市が拠点の「好特売(Haotemai)」、天津市(Tianjin)や北京市で店舗を展開する「食恵邦」、南京市(Nanjing)を中心とした「小象生活」など各地でチェーン店が誕生している。

 こうした店舗に並ぶ商品は輸入品が多い。業界関係者によると、輸入商品は中間利益が比較的高く、一定の価格交渉がしやすいという。また、海外から大量に仕入れても見込みに反して売り上げが伸びず、在庫を抱えるケースがある。賞味期限が残り半分や3分の1になるとスーパーが受け入れないため、メーカーが在庫を放出する受け皿として臨期食品ビジネスが成り立っている。

 しかし今年8月、「中国版ドン・キホーテ(Don Quijote)」といわれるディスカウントストア「Boom Boom Mart 繁栄集市」が破産申請を準備していると報じられた。中国メディアによると、今年3月ごろから卸売りへの支払い不履行などのトラブルで約20件の訴訟を抱え、各地の店舗が閉店しているという。

 中国では「もうかる」とみられる新ビジネスが登場すると、異業種も含めて次々と新勢力が参入し、すぐに過当競争が起きることが多い。臨期食品もその例にもれず、次々と新たなチェーンの店舗が誕生している。また、店頭販売とオンライン配達を結合した阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)のスーパー「盒馬鮮生(Hema Xiansheng)」は昨年10月、各店舗の臨期食品を集めた専門スーパーを上海にオープンした。さらにオンラインショップでは臨期食品専門のサイトが次々と登場し、SNSでも臨期食品愛好家の購入グループが増えている。臨期食品はあくまで過剰供給の副産物であるため、商品が不足しつつある状況だ。

 チェーン店は生き残り策を模索している。「好特売」のある店舗は臨期食品を2割程度にとどめ、残りは消費期限の長い日用品や化粧品、中国版ガチャガチャ(カプセルトイ)といわれる「盲盒(ブラインドボックス、Blind Box)」などを販売。店舗の責任者は「臨期食品は客をひきつける呼び水にすぎず、化粧品や盲盒で利益を稼いでいる」と説明する。「嗨特購(HitGoo)」は臨期食品に頼らないオリジナル商品のブランドを立ち上げて昨年12月、北京市に面積2000平方メートル、商品点数6000SKUの大型店をオープンした。「恵買喵」は地方の中小都市をターゲットに大型店を構え、「地方のコストコ(Costco)」を目指している。競争の激しい中国社会で、各企業がメタモルフォーゼ(変身)に懸命となっている。(c)東方新報/AFPBB News