【11月1日 東方新報】中国の都市部でオートバイの姿は見かけることは非常にまれだ。食事をデリバリーするスクーター風の車両がよく走っているが、それはよく見れば大型の電気自転車。中国全土約200の都市で市中心部への乗り入れが禁止されている。にもかかわらず、近年は急激なバイクブームを迎えている。

 中国でバイクの年間生産台数はピーク時3000万台に達していたが、交通事故の多発やバイクの違法改造が社会問題となり、各地で市街地への進入規制が行われた。さらに市民の足として電気自動車が普及。消費力の向上で経済的余裕のある人は乗用車を購入するようになり、バイクの存在感は低下する一方だった。

 しかし2016年に底を打ってから生産台数は増え続け、2021年は2000万台にまで回復。中国では近年、キャンプやパドルボートなどのアウトドアがブームになっており、屋外を自由気ままに走るバイクもその流れに乗った形だ。

 都市部では自動車教習所の夜間バイク教習コースが満員に。人気バイクは注文しても半年以上、入荷待ちとなっている。バイクをテーマにしたインフルエンサーも次々現れ、ショート動画投稿プラットフォーム「抖音(Douyin)」ではバイクに関する投稿動画が515億回再生されている。

 バイクブームの主流はZ世代の若者だ。北京市でバイクショップを経営する周晋宇(Zhou Jinyu)さんは「お客さんの半数近くが20~25歳で、北漂族タイプの人が多い」と説明する。「北漂族」とは北京市戸籍を持たずに長年暮らす人々を指す。高学歴でIT企業を転々としたりアーティストやミュージシャンをしたりしている北漂族は、束縛を嫌い、孤独を感じても自由を大切にする。1人で風を切って走るバイクは彼らの生き方にマッチするようだ。

 また、新たにバイクに乗る女性が、男性と同等かそれ以上に多いというのも特徴だ。スタイリッシュなデザインで運転しやすい車種が多いことが女性を後押ししている。女性に人気の125ccバイク「春風狒狒」は8980元(約18万1603円)で、iPhone13Proの価格と大差がない。

 バイク人気が高まる中、都市部の進入規制が産業の成長を妨げているという声も高まっている。自動車大手「吉利汽車(Geely Automobile)」創業者の李書福(Li Shufu)氏は「中国は世界で唯一のバイク制限国家だ」と指摘。先進国ではバイクが交通渋滞や駐車場不足の問題緩和に貢献していると述べ、規制の解除を訴えている。近年は陝西省(Shaanxi)西安市(Xi’an)や山東省(Shandong)青島市(Qingdao)など制限を解除する都市も増えている。

 中国で250cc以上の中型・大型バイクの保有台数は、人口比でみると日本や欧米の8分の1程度といい、バイク市場は今後さらに拡大していきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News