【9月30日 AFP】先週末の臨時総会で「不穏な動き」を見せた国際ボクシング協会(IBA)に対する、国際オリンピック委員会(IOC)の我慢の限界が近づきつつあるようだ。IOCの広報担当は29日、AFPに対し、IBAの会長選挙が行われなかったこと、そしてIBAがアルメニアの首都エレバンで行われた総会でウクライナ・ボクシング連盟(BFU)の資格を停止したことを「非常に懸念している」と明かし、12月に行われるIOC理事会で「状況を十分に検討する必要がある」と述べた。

 この展開は五輪の定番競技であるボクシングの将来を占う上で大きな意味を持つ。

 不正続きのIBAは、2020年から昨年に延期された東京五輪に続き、2024年パリ五輪でも競技運営からの除外がすでに決まっている。

 ボクシングは2028年ロサンゼルス五輪で実施されるかどうかも不透明な状況で、同五輪の初期プログラムからは外されたものの、IOCはIBAが必要な改革を行えば2023年に資格を回復するとして扉を開いている。

 2004年アテネ五輪から2016年リオデジャネイロ五輪にかけての判定やレフェリングの不正疑惑、多額の負債、そして米国から「犯罪組織のリーダーの一人」と指摘されていたウズベキスタン人の元会長に悩まされたIBAは、2020年にロシア人のウマル・クレムレフ(Umar Kremlev)氏を新会長に任命した。

 新会長の下でカナダ人弁護士のリチャード・マクラーレン(Richard McLaren)氏を中心とする独立調査チームが発足したものの、民間警備会社の社長だった39歳の同氏は、ボクシングが安全な状態であることをIOCに納得させるような仕事はできていない。また、IBAがロシア国営天然ガス企業ガスプロム(Gazprom)に「財政面で依存」していることも不安要素となっている。

 昨年5月にクレムレフ氏は、会長選に立候補していたオランダ人のボリス・ファンデルフォルスト(Boris Van der Vorst)氏が除外されたため無投票で再選を果たしたが、この1か月後にスポーツ仲裁裁判所(CAS)はファンデルフォルスト氏が除外された理由を棄却している。

 CASの判決により再選挙の機運は高まったが、IOCの広報担当はそれが25日に行われなかったと指摘。それどころか、投票の途中で停電になるなど混乱した状況の中、「選挙を行わないという投票だけ」が行われたという。

 またIOCは、ロシアが軍事侵攻した2月からウクライナのスポーツが厳しい状況に直面する中、IBAが同国ボクシング連盟を資格停止としたことも問題視。広報担当は、「これらの不穏な動きにより、IOC理事会は次回の会合で状況を全面的に見直さざるを得ない」と警告した。(c)AFP/Coralie FEBVRE and Diane Falconer in Paris