【10月1日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は先月末、無人探査機「DART」を小惑星「ディモルフォス(Dimorphos)」に体当たりさせて軌道を変える、世界初の「地球防衛」実験を実施した。

 DART(二重小惑星進路変更実験)ミッションは、宇宙船衝突よる衝撃を利用して小惑星の進路をそらす技術を検証している。いわば、ニュートンの運動法則を頼りに、宇宙空間でビリヤードをするようなものだ。

 これは接近する天体から地球を守る方法の一つにすぎない──だが、現在の技術では唯一実行可能な方法だ。

 NASAの地球防衛部門を統括するリンドリー・ジョンソン(Lindley Johnson)氏は、最近の記者会見で「今回の実証実験は、将来の実行可能な方法を増やしていく手始めとなる」と述べた。

 この他には未来的な響きがする「重力トラクター」や、衝突が想定される天体を核兵器で爆破するというハリウッド(Hollywood)映画さながらのミッションなどの構想もある。

■重力トラクター

 接近する天体を早期(地球に到達する数年~数十年前)に検知できた場合、宇宙船を送り込み、長時間にわたって天体と並んで飛行させて、宇宙船の重力で天体の進路をそらすことが可能となるだろう。これが、いわゆる重力トラクターだ。

 DARTプログラムに携わる科学者トム・スタトラー(Tom Statler)氏は、昨年11月のDART打ち上げ時の会見で、この方法の長所は「小惑星を移動させる法則が十分に理解されていることだ。それは重力であり、われわれは重力がどのように働くかを理解している」と説明した。

 しかし、宇宙船の質量には制限があるため、直径が500メートルを上回る小惑星に対しては、重力トラクターはあまり効果的ではないだろう。こうした大きい小惑星こそが、まさしく最大の脅威となる可能性がある。