■「怒りと悲しみ」

 Awichはアトランタでアフリカ系米国人男性と結婚。曲のリリックにあるように「刑務所を出たり入ったり」を繰り返していた夫は、銃で撃たれて命を落とした。

 まだ小さかった娘を連れて日本へ戻ったが、最初の2年間は「孤独で、途方に暮れていた」と話す。ただ「怒りと悲しみに向き合うため」に詩を書き続けた。

 ある日、父親から言葉をかけられる。沖縄の人は皆、戦争で家族や友人を失った、「それでも私たちはまだ生きている」と。「沖縄人として前に進まなければならない。それが父や沖縄の祖先が私にくれた力だ」、そう思った。

 今娘は14歳。沖縄の本土復帰50年に合わせ5月にAwichがリリースした曲「TSUBASA」の一節をラップしている。

 この曲は、娘が通っていた学校の校庭に米軍ヘリの窓枠が落下した事故をテーマに書き下ろした。「大空を飛び交う影」「引き裂く音が遮る言葉」といった描写が登場し、「自由に飛んでみたいんだ、青く広がる空を」と歌う。

「私の娘は日本人と黒人のミックス」と言うAwich。外国人の親を持つ子どもにとって、ほぼ均質的な日本での暮らしが「時に難しい場合がある」ことも承知している。「娘がまだ小さかった頃、彼女には疑問に思うことがたくさんあった。その答えは、2人で一緒に見つけていった」

 Awichは言う。「かつて私たちがはめられていたような型は、意味がなくなりつつある」と。

 女性だからといって「それらしい何かである必要はない」とも言う。「母親でありながらセクシーであってもいい。控えめでなくてもいいし、知的であってもいい。クリエーティブでエロチックであってもいい」

「私たちは何にでもなれるのだから」 (c)AFP/Katie Forster