【9月11日 AFP】蛍光色のジャンプスーツにハイカットスニーカーといういでたちで現れたラッパー兼シンガーの「クール・ファワ」(27)は、マイクをつかむと集まった聴衆をあおり立てる。最もよく知られている曲「Valide」を歌い始めると、聴衆全体が揺れながらコーラスする。

 会場は中央アフリカの首都バンギにあるバー。中央アフリカは、女性ラッパーがスターダムにのし上がることが最も難しい国の一つと言えるだろう。

 音楽業界では通常、富裕国の大都市に才能ある人材が集まり、スターを目指してインターネットで自分の曲や動画をアピールする。

 だが最貧国の一つで、9年以上も内戦が続いている中央アフリカでは、インターネットにアクセスできるのは人口約500万人のうちわずか10%しかいない。

 それでも「クールな女の子」を意味するクール・ファワこと本名プリンシア・プリソン(Princia Plisson)さんにとって、そうしたことは問題でない。

 2012年からプロとして活動してきたクール・ファワは、インスタグラム(Instagram)で4500人以上のフォロワーを持つ。2018年のヒット曲「On va se marier(私たち結婚しますの意)」はユーチューブ(YouTube)で再生回数5万回を超えた。

 もちろんアデル(Adele)やビヨンセ(Beyonce)、テイラー・スウィフト(Taylor Swift)といったスターのフォロワーと比べると微々たる数かもしれない。だが、中央アフリカの実情を考えれば、大変な認知度と言える。

 クール・ファワは主に旧宗主国の言葉、フランス語で歌い、そこに公用語のサンゴ語と英語を巧みに織り交ぜる。