■2パックとの出会い

 教師の父と料理人の母の間に「浦崎亜希子」として生まれた。墓地に囲まれた、沖縄の大きな古い家で育った。

「沖縄はとてもスピリチュアルな場所」だと言う。「毎晩寝ようとすると、部屋の中に何か気配を感じて…それで一晩中、いろいろなことを書いていた」

 14歳の時、米国の伝説的ラッパー、2パック(2Pac、本名:Tupac Shakur)のCDを聴き、夢中になった。そのリリック(歌詞)を勉強しながら自分の日記や詩に韻をつけていった。

 5年後、アトランタの大学に留学する。在日米軍基地の約70%が集中している沖縄で「米国文化に囲まれて育った」影響もあったという。

 戦争で大きく傷ついた沖縄。親戚には第2次世界大戦(World War II)で戦死した人もいる。祖父からは、米軍基地に忍び込んでスープの缶詰を盗み、貧しい近所の人たちと分け合ったという話を聞いたこともある。

「でも子どもにとってみれば、フェンス越しにアメリカの子どもたちの遊ぶ声が聞こえたり、遊んでいる場所が見えたりする。いろいろなものがカラフルで大きくて。みんなとてもフレンドリーなんだ」

「私たちはそういうことに複雑な気持ちを抱いている。それが、沖縄」とAwichは言う。「すべてが矛盾している」