人間の食品廃棄物、ホッキョクグマの脅威に 論文
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【7月26日 AFP】北極圏に位置するロシアの村で3年前、何十頭ものホッキョクグマが食べ物を求めてうろつき、ごみ処分場で餌をあさる様子が撮影された。科学者や自然保護団体は先週公表した論文で、人間の食品廃棄物がホッキョクグマの脅威となる事例は増加しており、当時世界中に報じられたロシアの出来事もその一つにすぎないと警鐘を鳴らした。
北極圏では、世界平均の約3倍の速さで温暖化が進んでおり、ホッキョクグマが狩りをする際に欠かせない海氷が減っていることから、ホッキョクグマは気候変動の直接的な悪影響にさらされている。
環境保全の専門誌「オリックス(Oryx)」に掲載された論文の共同執筆者で、ホッキョクグマ保護団体「ポーラー・ベアズ・インターナショナル(Polar Bears International)」のジェフ・ヨーク(Geoff York)氏は、「人間とホッキョクグマとの有害な接触が、ゆっくりとではあるが確実に増えている。海氷の減少が主因となり、ホッキョクグマが上陸する機会が増え、より長期間居座るようになっているからだ」と指摘した。
ヨーク氏は、「欧州や北米のクマの例から、ごみ捨て場がクマにとって大問題となっていることは把握している」と述べている。
例えば米アラスカ州カクトビク(Kaktovik)には、先住民族イヌピアット(Inupiat)が伝統的に捕獲してきたホッキョククジラの残骸を投棄する沿岸の処理場があり、毎年秋になると90頭ものホッキョクグマが集まってくるという。中には160キロ離れた場所から移動してきた個体もいた。
論文執筆者は、氷の状態が悪かった2019年、ロシアのベルーシヤグバ(Belushya Guba)のごみ処分場にホッキョクグマ50頭以上が集まった問題について、開放投棄型のごみ処分場が招きかねない事態が顕著に表れた例だと説明している。
ホッキョクグマは、高脂肪の餌を食べるよう進化してきた。春にアザラシの子を捕食して体重を増やし、その年の残りの期間を生き延びる。
ヨーク氏によると、ホッキョクグマにとって重要な時期となる春に氷が早く解けてしまうと、体重を十分に増やせず陸に戻るホッキョクグマがいるほか、十分な栄養を得た個体でさえ、より長く陸にとどまるようになっているという。
ホッキョクグマは格好の餌場としてごみ処理場に集まるが、「同時にプラスチックや有毒物質も摂取していることを、クマたちは知らない」とヨーク氏は述べている。キャットフードなどを食べたり、ごみ処分場で人間や他の動物と接触したりすることで、病気になるリスクもある。