【7月13日 東方新報】中国で古くから愛される花と言えば、冬の寒さに耐えて美しい花を咲かせる梅、5月に見ごろを迎えて「五月花神」「花中之王(花の王者)」と呼ばれる牡丹(ボタン)、そして夏の暑い盛りに花開くハスだ。北京の頤和園などではハスの満開シーズンを迎え、多くの市民が訪れている。

「出淤泥而不染(泥の中で育つのに、汚れに染まらない)」と称され、高貴なイメージがあるハス。中国では古くからハス(芙蓉)は女性の象徴であり、多くの詩歌で美しい女性の比喩として表現されてきた。

 世界文化遺産の庭園・頤和園の昆明湖はこの季節、一面がハスの葉と花に覆われる。鮮やかな花の色から「ハス紅綴雨(赤いハスの花から落ちる雨の滴)」と言われ、どこから撮影しても「映える」と来場者の目をひきつけている。

 北京では紫竹院公園も人気スポット。小舟に乗ってハスの花を間近で楽しむことができる。200種類以上のハスを観賞できる北京植物園、満開時にハス祭りが開かれる円明園など、見どころは豊富だ。

 ハスのシーズンになると毎年注目を集めるのは重慶市(Chongqing)大足区(Dazu)の雅美佳湿地公園にある「宇宙ハスの花」だ。衛星を使ってハスの実を宇宙空間に送り、宇宙で育てられた新品種。一般的なハスより大きく、色が鮮やかで開花期間が長いという。唐の時代からハスを栽培している大足区は「中国のハスの故郷」と言われる。長い伝統と最新技術が融合した新しいハスの形を見せている。

 見た目の鮮やかさ、華やかさを好む中国では、バラも人気だ。バレンタインデーには男性から女性にバラの花を渡すのが定番となっている。また、日本の花見文化が伝わる形で近年は「桜ブーム」が巻き起こっている。桜をモチーフにしたラテやアイス、お菓子などが数多く登場し、若者がコスプレ風の伝統衣装「漢服」をまとって花見をすることが流行している。

 それでもハスは、中国の夏の代名詞として不動の地位を保っている。屋外の広大な敷地に咲き誇ることが多いハスは、新型コロナウイルス感染の恐れが少なく鑑賞できる。長期のコロナ禍に疲れる市民に対し、安らぎの空間と時間を提供している。(c)東方新報/AFPBB News