【5月25日 東方新報】中国教育部によると、中国で2022年夏に卒業する大学生(専門学校等含む)は前年比167万人増の1076万人に達し、初めて1000万人の大台を超える見込みだ。年々増え続ける大卒者で毎年問題になるのは、希望の職業に就職できず、「卒業イコール失業」となる若者たち。特に今年はコロナ禍の影響で企業側の求人意欲が低く、「歴史上、最も就職が困難な年」といわれている。

 9月入学の中国の大学生が卒業するのは6~7月。2021年の卒業生909万人のうち、卒業と同時に就職したのは約6割だった。残る4割は大学院進学や海外留学、もしくは時間をかけて就職先を選ぶ「慢就業(ゆっくり就職)」の若者たちだ。ただ、進学や「慢就業」する余裕もなく、なおかつすぐに就職できない学生も少なくない。国家統計局によると、今年4月で16~24歳の失業率は平均よりはるかに高い18.2%に上る。

 2020年の調査では、大卒予定者の就職希望先は、生活が安定してステータスのある「公務員・公的機関・国有企業」が42.9%、華やかなイメージで高収入が見込める「外資系企業」が14.4%、チャイナドリームを目指す「起業」が10.4%、最先端の「IT企業などの新興業界」が9.0%などと、大きく偏っている。当然、希望の就職先にたどりつけない卒業生は多い。

 その一方で、工場や建設現場、港湾施設、鉱山などで働くいわゆるブルーカラーの労働者は深刻な人手不足が続いている。中国の高い経済成長を背景に、待遇は悪くはない。ホワイトカラーの企業の初任給が6000元(約11万5273円)程度なのに対し、最初から1万元(約19万2123円)を超える現場もある。安い社員寮や社食もあり、臨時ボーナスが出る会社もあり、「大学を出て現場で働くなんて」という固定観念にとらわれない大卒者も増えている。

 昨年、工業系大学を卒業して山西省(Shanxi)の探鉱現場で働いている侯さんは「ツルハシを使って人力で石炭を掘るわけじゃありません。炭坑近くのエアコンがきいた事務室で働き、リモート遠隔操作で採掘機を使い、石炭を掘っています。大学で学んだ知識が生きているし、有名企業に就職した友人より給料はいいですよ」と満足げに話す。

 大学でコンピューターを専攻した孫さんは福建省(Fujian)の港湾施設で働いている。「港では人工知能(AI)を持ったクレーンがコンテナを自動で運び、コンピューターが在庫管理をしており、私はシステム全般の管理をしています。あくまで現場の労働者なのでトラブルがあればすぐに出向き、汗と油まみれになりますが、それもやりがいがあります」と笑みを浮かべる。

 もちろん、そうした明るい話ばかりではない。江蘇省(Jiangsu)の大学を昨年卒業した女性の郭さんは外資系企業を希望したが就職できず、大学院への進学を検討。親からは「これ以上の教育費を出すのは難しい」と言われ、学費を稼ぐ目的で外資系企業の工場に就職した。夜11時から翌朝8時までの夜勤を含め3交代制の勤務で、仕事が多い時は12時間立ちっぱなし。密閉性の高い息苦しい作業服を着て、業務中はスマートフォンを見ることもできない。郭さんは「体重は1年間で55キロから40キロに減りました。お金はたまるけど、疲れ切って進学のための勉強はできない。最近はもう、どうでもよくなってきました」とやつれた表情で話す。

 今年も大学の卒業シーズンまであとわずか。1000万人を超える若者が、人生の選択を迫られる。(c)東方新報/AFPBB News