【7月12日 AFP】陸上男子5000メートルと1万メートルで2012年ロンドン五輪、2016年リオデジャネイロ五輪と2大会連続の2冠に輝いたモハメド・ファラー(Mohammed Farah、英国)が、幼少期にアフリカ東部ジブチから英国へ人身売買され、子どもの召し使いとして働かされていたと明かし、本名がフセイン・アブディ・カヒン(Hussein Abdi Kahin)であることを告白した。

 現在39歳のファラーは、8、9歳の頃に見知らぬ女性によって英国に連れて来られ、モハメド・ファラーの名前を与えられた後、別の家族の子どもたちの世話をさせられていたと、13日に放送される英BBCのドキュメンタリー番組「モー・ファラーの真実(The Real Mo Farah)」で明かした。

 これまでソマリア難民として両親と共に渡英したと話していたファラーだが、両親が英国に来たことは一度もなく、4歳のときに父親がソマリアの内戦で死亡し、母親ときょうだい2人がソマリア北部で一方的に独立を宣言している「ソマリランド共和国」に住んでいると驚きの告白をした。

 ファラーは番組の中で、「実は自分はあなたが思っている人間ではない」と切り出し、「大半の人々が私をモー・ファラーとして知っているが、それは私の名前ではないし、現実とは違う」と語った。

 一緒に英国に来た女性は「モハメド・ファラー」という名前の横に自分の写真が貼り付けられた偽造旅券を手に、これから親戚と一緒に住むことや、名前がモハメドになることを告げたという。

 ファラーはまた、「食べ物を口にしたかったら」家事をしたり子どもの面倒を見たりしなければならず、「よく浴室に閉じこもって泣いていた」とも明かした。

 この境遇について、ファラーは自身の体育教師だったアラン・ワトキンソン氏に打ち明け、同氏が地元当局へ知らせたという。そして、同氏が英国の市民権を申請してくれたことにより、ファラーは自身いわく「長いプロセス」の末、ようやく2000年7月25日に同国市民として認められた。(c)AFP