【7月10日 AFP】元イランの柔道選手サイード・モラエイ(Saeid Mollaei、アゼルバイジャン)と、同選手がイランから亡命する要因になったサギ・ムキ(Sagi Muki、イスラエル)との対戦が、9日に行われた柔道グランドスラム・ブダペスト大会(2022 Judo Grand Slam Budapest)の試合で実現した。

 両選手は81キロ級の3回戦で対戦し、モラエイが勝利した。現在は友人となっている二人は、試合後には抱擁を交わした。

 ムキがインスタグラム(Instagram)で「スポーツが政治に勝利」したと喜び、「難しい状況でもあらゆる溝に橋を架けるスポーツと友情の力」をたたえると、モラエイは「ありがとう兄弟」と返した。モラエイは決勝まで勝ち進み、ギリェルメ・シュミット(Guilherme Schmidt、ブラジル)に敗れたが銀メダルを獲得した。

 両者の物語は、2019年8月の世界柔道選手権(World Judo Championships 2019)にさかのぼる。81キロ級の世界王者だったモラエイは、準決勝と3位決定戦で敗れて5位となったが、金メダルを獲得したムキとの対戦を回避するため、イラン柔道連盟(IRIJF)から試合を放棄するよう指示されていたことを明かし、連盟は資格停止処分を科された。

 モラエイはドイツへの亡命を強いられ、その後モンゴル、さらにアゼルバイジャンへ国籍を変更。昨年2月にイスラエルで大会が行われた際には、英雄として歓迎された。(c)AFP