【6月2日 CNS】中国では近年、時代劇や宮廷ドラマが人気となり、伝統的な装飾品への関心も高まっている。中でも『甄嬛伝(邦題:宮廷の諍い女)』『延禧攻略(邦題:瓔珞〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜)』『武媚娘(邦題:武則天 -The Empress-)』などの大ヒット宮廷劇では、2000年以上の歴史がある手工芸技術「花絲鑲嵌」を駆使したアクセサリーが頻繁に登場し、多くの視聴者を魅了している。

 2008年に国無形文化遺産に登録されている花絲鑲嵌。「花絲」は金、銀、銅の糸や薄片を使って複雑で繊細な模様を織り上げることを指し、「鑲嵌」はその模様に真珠や宝石をはめ込むことを意味している。

「花絲鑲嵌は機械ではどうやっても制作できません」と話すのは、重慶市(Chongqing)で花絲鑲嵌を継承している70歳の李昌義(Li Changyi)さん。細かい模様を適切な温度で溶接する技術は手作業だからこそなし得るもので、機械では再現できないという。

 一時は「時代遅れ」とみられた花絲鑲嵌の技術は失われる寸前だったが、最近の時代劇ブームで再び脚光を集めている。職人の大半は高齢者だが、新たに学ぶ若者も増えている。

 中国版ニコニコ動画と言われる動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili)」でライブ配信をしている「90後(1990年代生まれ)」の雁鴻(Yan Hong)さんも、その1人だ。彼女は『知否知否応是緑肥紅痩(邦題:明蘭~才媛の春~)』や『如懿伝(邦題:如懿伝 〜紫禁城に散る宿命の王妃〜)』などのテレビドラマに登場する花絲鑲嵌のアクセサリーを自作し、オリジナルも手がける。4年間で200本以上の制作動画をリリースし、フォロワーは60万人を超えている。

 同じ「90後」世代で重慶市の男性、辜国强(Gu Guoqiang)さんも数年前から、ショート動画投稿サイト「快手(kuaishou)」で花絲鑲嵌に関する180本以上の動画を投稿。髪飾りや歩揺(頭飾り)、イヤリング、ブローチに西洋技術を取り入れて仕上げるのが評判で、海外から毎年300件の注文が入ってくる。

 その辜さんの師匠が李昌義さんだ。李さんは2015年以降、伝統継承のため全国から2000人以上の弟子を受け入れており、一部の人はすでに工房を設けて仕事している。辜さんは「花絲鑲嵌を受け継ぎ、さらなる革新を目指していきます」と話している。(c)CNS/JCM/AFPBB News