【5月25日 AFP】中国当局から流出した新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)に関する数万点の内部資料が24日、米団体により公開された。資料には数千枚の写真や公文書が含まれ、同自治区でウイグル人などの少数民族が暴力的な手段で収容された実態が改めて浮き彫りとなった。

 資料は、匿名の人物が新疆の公式データベースをハッキングして入手し、米NPO「共産主義犠牲者記念財団(Victims of Communism Memorial Foundation)」に所属するドイツ人研究者アドリアン・ツェンツ(Adrian Zenz)氏に提供。ミチェル・バチェレ(Michelle Bachelet)国連人権高等弁務官による新疆訪問を控え公開された。

 活動家によると、新疆ではイスラム教徒を中心とするウイグル人ら少数民族100万人以上が収容所や刑務所に収容されてきた。一方、中国政府はこれら施設を職業訓練所としており、強制収容の事実はなく、過激な宗教思想の根絶を目的とした施設だと説明している。

 だが、公開された写真や文書からは、収容が自発的なものではなかったことや、習近平(Xi Jinping)国家主席をはじめとする政権上層部が厳しい取り締まりを呼び掛けていたことが示されている。

 資料によると、同自治区の陳全国(Chen Quanguo)共産党委員会書記は2017年の演説で、収容所から脱走を試みる者は射殺するよう命じ、地元の役人に「宗教信者を厳重に管理する」よう要請。趙克志(Zhao Kezhi)公安相は18年の演説で、習国家主席が収容所の増設を指示したことに言及したとされる。

 さらに、警察から流出した被収容者の写真2800枚以上も公開された。こうした被収容者の中には、違法な演説を聞いたとして拘束された17歳や、別の被収容者の親族だという理由で拘束されたとみられる16歳も含まれている。

 AFPが先に入手した警察の名簿でも、一度に数百人の住民が捕らえられ、一つの世帯から多数の人が拘束されることも頻繁にあったことが示されている。今回の資料の一部は、英BBCや仏紙ルモンド(Le Monde)などの報道機関によって信ぴょう性が確認された。

 資料からは、収容所内部の様子も浮き彫りとなった。訓練の場面とみられる写真には、被収容者の姿をした人々が頭を袋状の物で覆われて手錠をかけられた状態で、警棒を持った警察官によって拘束され、迷彩服を着て銃を構えた他の警察官に囲まれる様子が写されている。

 英国のリズ・トラス(Liz Truss)外相は、流出した資料の内容は「衝撃的」だと非難。中国を訪問中のバチェレ氏が現地の状況を的確に把握できるよう、「完全かつ制限のない」視察を許可するよう中国側に要請した。

 一方、中国外務省の汪文斌(Wang Wenbin)報道官は、流出資料を「新疆を中傷する反中国勢力」による「寄せ集めの資料」と断じ、報道機関が「うそとうわさを広めている」と非難した。(c)AFP