【6月12日 AFP】タイ・バンコクの高架下で観衆の叫び声がこだまする中、強烈なスポットライトと街灯が上半身裸で戦う男性2人を照らしている──。ここは「ファイト・クラブ・タイランド(Fight Club Thailand)」の試合会場だ。

 格闘技シーンのレベルの高さで知られるタイの地下クラブで、定期的に開催されるアマチュアファイターの試合。互いに交わすのは、血とあざだけというのが決まりだ。

 雰囲気はプロボクシングの熱狂的な試合に近い。だが、輸送コンテナに囲まれた貧しい港湾地区の会場は、国技「ムエタイ」の華美で魅力的なスタジアムとはほど遠い。

「ここでは闘い方を知っている必要はありません。闘うハートさえあればいいのです」。2016年にクラブを共同設立したチャナ・ウォラサート(Chana Worasart)さん(30)はそうAFPに語った。

 立ち上げには、ブラッド・ピット(Brad Pitt)さん出演の映画『ファイト・クラブ(Fight Club)』の影響もあった。アマチュアのボクサーが自分の技能を試したり、あるいは攻撃性を発散させたりすることができる場をつくりたかったのだ。

「さまざまな職業の人がいたり、(プロとは)異なる格闘スタイルがあったりすることが人気の理由だと思います」

■「暴力を友情に」

 映画の『ファイト・クラブ』では、クラブについて口外することを禁じる有名なセリフがあるが、バンコクのクラブは「暴力を友情に変えるリング」と称している。

 クラブの存在は反響を呼び、地下試合のうわさが口コミで広がる中、フェイスブック(Facebook)のプライベートグループは7万3000人のメンバーを獲得している。

 3分間のラウンド中、格闘家たちは総力を挙げて闘う。勝者と敗者の宣言はない。

 だが試合は無制限ではない。肘打ち、組み技、投げ技、後頭部への攻撃は厳しく禁じられている。