■地下格闘技のアイデンティティー

 当然ながら、この活動はタイ警察の目を逃れてはいない。

 当局は、2016年からこの地下格闘技の存在を把握している。同国のボクシング法に触れるともされており、違反とみなされれば禁錮1年、約600ドル(約8万円)以下の罰金が科される。だが、たまに警官が現れることはあるものの、試合は継続している。

 一方、クラブ側はボクシング法の適用外だと主張している。すなわち、無許可で格闘を行っているのではないという立場だ。

 チャナさんは、クラブは地方行政局(DOPA)に承認されていると言う。

「合法的な、認可された試合にする考えに反対はしませんが、地下格闘技のアイデンティティーを失うことはできません。どう両立させるかが問題です」

 クラブ設立当初は明確なルールも存在せず、ただ雰囲気の良くない集まりでしかなかった。

 しかし今では格闘のガイドラインや選抜の手続きが定められ、リスクに関する誓約書、防護具や現場の救急医療なども用意されている。

「格闘家同士の殺し合いなど求めていません。スタミナ切れや負傷で続けられなくなったら、試合を止めます」とチャナさんは語る。

 食料品店のオーナーだという参加者(23)は、ここでの試合は「(伝統的な格闘技と)かなり違います」と話す。「コンテナに囲まれて闘うのも楽しいし、わくわくします」 (c)AFP/Pitcha Dangprasith and Pathom Sangwongwanich