■マイナスイメージ

 しかし、現代社会において尿を回収するには、トイレや下水道システムそのものを見直す必要がある。

 1990年代初頭、スウェーデンでエコビレッジ数か所を選び、尿を肥料に転用する試験的プロジェクトが開始された。現在では、スイス、ドイツ、米国、南アフリカ、エチオピア、インド、メキシコ、フランスでも進められている。

 スイス連邦水資源科学技術研究所(Eawag)の研究員トーベ・ラーセン(Tove Larsen)氏は「環境分野の技術刷新、特に尿の分離のような技術は根本的な変更が求められるため、導入するには時間がかかる」と語る。

 初期の「し尿分離トイレ」は、見栄えや実用性、悪臭などの問題があったという。だが、Eawagとスイスの企業が新たに共同開発したトイレは、尿が別の容器に流れるようになっている設計で、こうした問題を解決できると期待されている。

 尿を回収したら、それを処理する必要がある。尿は通常、病気の感染源にはなりにくいため、世界保健機関(WHO)が推奨する処理方法は、一定期間放置することだが、低温殺菌することも可能だ。さらに濃縮・脱水、容積の圧縮、運搬コスト削減などのためにさまざまな技術がある。

 もう一つの課題は、尿転用に対するマイナスイメージを払拭(ふっしょく)することだ。仏パリの計画当局は、店舗と住宅600戸から成るエコ地区を開発中で、尿を回収し緑地の肥料として活用する計画を進めている。

 パリのレストラン「211」には、無水で尿を回収するトイレが設置されている。オーナーのファビアン・ガンドッシ(Fabien Gandossi)氏は「とても好評です」と言う。「少し驚かれますが、従来のトイレとほとんど変わりません」

 合成肥料の価格は、ロシアのウクライナ侵攻による供給不足で高騰しており、各国は食糧安全保障を強化する必要に迫られている。こうした事態は「このテーマについてもっと知ってもらう」きっかけになるかもしれないと、パリの当局者は語った。(c)AFP