【5月3日 AFP】ロシアによるウクライナ侵攻が始まった直後の2月末に洪水が起きた時、マリアさん(82)は自宅の扉を開けることができず、窓からはい出した。

 ロシア軍による侵攻は、ミサイル攻撃で建物を壊し人命を奪っただけでなく、ダムの決壊も招き、ウクライナ首都キーウ近郊のデミディウ(Demydiv)村に洪水をもたらした。

 2月下旬にキーウ制圧を目指しロシア軍が南下した時、村の住民は自分たちが戦場にいることに気付いた。

 ロシア軍の進撃を阻むため、ウクライナ軍は他の場所でもそうしたように、村付近にあるイルピン(Irpin)川に架かる橋を爆破した。村を通ってこの橋へと続く道は、キーウ中心部に直結しており、大統領府までは車で約1時間だ。

 オレクサンドル・メリニチェンコ(Oleksandr Melnychenko)村長によると、橋を渡れなかったロシア軍は進路を変更し、後に民間人の遺体が多数発見されたブチャ(Bucha)へ向かったという。

 村長は、橋の爆破に加え、水流を増やして川幅を広げ、ロシア軍による仮設橋の通行も阻止しようと、当局がダムの放流も行ったと話した。

 だが洪水が起きたのは2月27日、飛翔(ひしょう)体がダムを直撃し、水位が数メートル上昇した時だった。

 以後、既に2か月が経過したが、排水作業は依然続いている。自宅が浸水したままのマリアさんは、この戦争に怒り、疲れ果てている。「戦車も洪水もいらない。ただ平和が欲しい」 (c)AFP/ Joshua MELVIN