【5月4日 AFP】ウクライナの首都キーウ近郊にあるブチャ(Bucha)のヤブルンスカ(Yablunska)通り(リンゴの木通り)では、ロシア軍による戦争犯罪の犠牲者とみられる少なくとも20人の遺体が見つかった。そのうち、AFPの調査により明らかになった4人の最期について、全4回の連載で伝える。

■第2回:両手を挙げ撃たれた父 ── ミハイロ・コバレンコさん(62)

 3月5日、ミハイロ・コバレンコ(Mykhailo Kovalenko)さん(62)は、まだ避難が可能なうちに妻と娘と共にブチャから車で逃れようと試みた。ブチャ周辺では、激しい戦闘により身動きが取れなくなった住民が爆撃や銃撃の危険にさらされ、水道も止まる状況に置かれていた。

 娘の恋人で、名字を伏せることを条件にAFPの取材に応じたアルテムさんによると、ヤブルンスカ通りにロシア軍が設置した検問所に到着したコバレンコさんは、両手を挙げて車から出たにもかかわらず、発砲を受けた。娘と妻は逃げて生き延びたが、妻はその際に脚を撃たれて重傷を負った。

 趣味はクラシック音楽鑑賞とオーディオ機器収集で、ブチャののどかな街を散歩することが好きだったコバレンコさん。その最期は、むごたらしく突然なものだった。

 至近距離から撃たれたコバレンコさんの遺体は、29日間にわたり路上に放置された。親族は、AFPが4月2日に撮影した写真に写った遺体を見て、服装からコバレンコさんだと分かった。アルテムさんは同月18日、ブチャの遺体安置所に呼ばれ、遺体の身元確認を行った。

 アルテムさんによると、コバレンコさんの娘はブルガリアで難民として生活している。精神科治療を受けているが、父親が殺される場面を目撃したことで「毎晩目が覚める」という。

 AFP記者は4月18日、ブチャでコバレンコさんの遺体を納めた黒いひつぎが埋葬される様子を確認。埋葬に立ち会ったのはアルテムさんと親族2人だけだった。(c)AFP/Daphne Rousseau and Joshua Melvin