■ウォーキズムへの反感あおって保守派にアピール

 会場の講堂では、学生たちに合衆国憲法の縮刷版やロナルド・レーガン(Ronald Reagan)元大統領のバッジやステッカーが配られた。そこには「ポリティカルコレクトネスではなく、言論の自由を支持する」と書かれていた。

 ペンス氏は、満員の聴衆を前に「政治的教化」を糾弾する長広舌(ちょうこうぜつ)を振るい、そうした風潮によって「愛国教育」が追いやられてしまったと主張した。

 質疑応答の時間に学生の一人が持ち出したのは、米大学女子水泳でバージニア大学の選手が2位になり、ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)に所属するトランスジェンダーのリア・トーマス(Lia Thomas)選手が優勝した件だった。数年前まで男子チームに所属していたトーマス選手の女子選手権への出場をめぐっては、大きな論争が起きている。

 発言した男子学生は「わが校の素晴らしい伝統が、ウォークの左派によって壊されています」と失望を示し、トーマス選手を出場させるべきではなかったと訴えた。

 ペンス氏はすかさず、真の優勝者は2位の選手だと同調。「左派の多くは長年、文化戦争をあおってきた」とし、「うまくいっているようにも見えたが、敗北しつつあるようだ」と語り、大きな拍手を浴びた。

 ペンス氏の言葉を聴いていた同大の政治学教授で政治アナリストのラリー・サバト(Larry Sabato)氏は、大学のキャンパスや選挙集会、ソーシャルメディアを通じてウォーキズムへの反感をあおることで、保守派の有権者を動員する明確な戦略だとの見方を示した。

 共和党支持者の中でもこうしたメッセージ戦略を最も受け入れやすいのは、「予備選挙や党員集会に参加するような人々」だという。

 サバト氏が例に挙げたのは、昨年11月のバージニア州知事選で共和党から出馬し当選したグレン・ヤンキン(Glenn Youngkin)氏だ。同氏は選挙戦で、人種やジェンダーをめぐる学校教育が左傾化しているとされる傾向を阻止すると訴え、この公約を重点的にアピールした。

 サバト氏は、人種とジェンダーという論争になりやすいテーマが、今年11月の中間選挙および2024年の大統領選の争点になるとみている。

 ペンス氏はウォーキズムに照準を合わせ、勢いに乗って再びホワイトハウス(White House)入りを目指すのだろうか。

 この質問にサバト氏は静かに笑い、こう答えた。「それへの回答は、いずれまた」 (c)AFP/Camille CAMDESSUS