【5月8日 AFP】検査キットを開封し、綿棒で拭って液に浸す──今ではよく知られた手順だが、今回は新型コロナウイルスの検査の話ではない。犬のDNA検査だ。

 犬種鑑定によく使われるこのキットは約15年前に登場し、米国で爆発的な人気を博している。米国では、犬を1匹以上飼っている世帯は全世帯の4割近くを占めている。

 代表的な検査キットブランドの一つ「エンバークベット(Embark Vet)」はAFPに対し、2019年から20年にかけて前期比235%増の成長を遂げたと明らかにし、新型コロナの流行が拍車を掛けたとした。

 1回約100~200ドル(約1万3000~2万6000円)の検査料は決して安くない。だが、全米ペット製品協会(American Pet Products Association)によると、米国人は2020年だけでも、スロバキアの国内総生産(GDP)に匹敵する1040億ドル(約13兆5000億円)近くをペットに費やしているという。

■愛犬の行動が理解できるようになった

 採取した犬の唾液を送ると、2週間から1か月後には結果が出る。純血種の犬の飼い主が、血統を確認するために検査することもあるが、保護された犬を引き取った場合には「自分が飼っている犬の種類を知りたい」という別の動機がある。

 首都ワシントン在住の弁護士ミラ・バルトス(Mila Bartos)さん(51)は、保護シェルターから引き取った3匹の犬のDNA検査を行った。そのうちの1匹「ナティ(Natty)」は、ピットブル、ビーグル、チャウチャウ、ジャーマンシェパードの雑種だと分かった。さらに、近くのボルティモア(Baltimore)に「いとこ」がいることも判明した。一方、光沢のある茶色の毛を持つ「メイジー(Maisie)」は、代々ショードッグの血統だったことが分かった。

 バージニア州のコンサルタント、レビ・ノビー(Levi Novey)さん(42)はDNA検査によって、体重6キロの小さな愛犬「サマー(Summer)」の行動がいっそう理解できるようになったという。

「例えば、運動神経や狩猟本能、フェッチへの興味、甘えたい相手の選び方などは、祖先犬のことを考えると納得できました」

 ブリーダーから引き取ったジャーマンシェパードの見た目が、オオカミそっくりだからとDNA検査を受けた人もいる。

 ラブラドルは子どもと遊ぶのがうまい、ピットブルは攻撃的で番犬向きといった犬種ごとのステレオタイプは不正確なこともあるが、その犬種を理解する助けにもなると、人間とペットの関係について研究している心理学者のアレン・マコネル(Allen McConnell)氏は指摘する。