【4月24日 AFP】タイの首都バンコク中心部に立つ200年前の中華邸宅。歴史ある建物が次々と解体されるバンコクで、邸宅は現在、スキューバダイビングスクールとして使われている。

 チーク材の邸宅「ソー・ヘン・タイ(So Heng Tai)」は、インストラクターを務めるプーンサック・ポーサヤチンダー(Poosak Posayachinda)さん一族が8代にわたり所有してきた。

 ソー・ヘン・タイが今でも壊されていないのは、ダイビングスクールに改装するというプーンサックさんの決断によるところが大きい。

 もともとは、中国とのツバメの巣貿易を家業としていた一族の事務所兼住居として建てられたものだった。歴史的建造物に対する保護意識が低く、法的保護もほとんどないタイにおいて、古い建物が残っているのは珍しい。

 バンコクは近年、危険ともいえる速さで再開発が進んでいる。きらびやかなショッピングモールや豪華なコンドミニアムが乱立する一方、アールデコ様式の映画館「スカラ座(Scala)」や1920年代に建てられた英国大使館などは取り壊された。

 タイの法律では、建設から100年以上が過ぎた建物のみが保護対象となっている。収益性の高い土地の開発を犠牲にしてまで、歴史的建造物を保護しようという政治的意思はあまりみられない。

 歴史家で考古学者のパチャー・パノムワン(Phacha Phanomvan)氏によると、歴史的建造物は所有者の維持費負担が大きい。

 プーンサックさんは2004年、邸宅の中庭に水深4メートルのプールを設置。これまでに6000人以上の生徒を受け入れてきた。

 ダイビングスクールの収入が、年間最大2万5000ドル(約300万円)かかる邸宅の維持費に役立っている。