【4月17日 AFP】メキシコの首都に日が昇る頃、オマール・メンチャカ(Omar Menchaca)さん(66)は入り組んだ運河にカヤックをこぎ出す。水路に浮かぶ庭園を巡り、旅行者が置き去りにしたごみを回収するためだ。

 メキシコ市のソチミルコ(Xochimilco)地区は、14~16世紀に栄えたアステカ(Aztec)王国の首都だった時代の面影を残す人気の観光地だ。訪れる人は色とりどりのゴンドラに乗り、先住民が築いた運河や人工島を巡る。

 メンチャカさんは何度もパドルを置き、水面の花の間に浮かぶごみを素手で拾った。子どもたちが自分をまねてごみを拾う様子を見るのが、何よりも楽しみだと言う。

 若い頃のメンチャカさんは、陸上競技の国内チャンピオンだった。「ここへは最初、トレーニングの拠点とするために来ました」と話す。「そのうち、運河がごみだらけなことに気付き始めました」 

「週末には約6000人がソチミルコを訪れますが、残念なことに彼らはこの土地を大事にしません」

 メンチャカさんは国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)に指定されたソチミルコの歴史を伝えるカヌーツアーも組んでいる。

 ソチミルコの自然保護区は、絶滅危惧種とされる両生類メキシコサンショウウオ(ウーパールーパー)など固有種の生息地でもある。環境活動家らは地域に侵入する開発の影響も心配している。

 国際的な環境保護条約で、ソチミルコは「国際的に重要な湿地(Wetlands of International Importance)」に認定されている。