【3月29日 AFP】恋い焦がれるような視線に優雅なリフト、悠々と絡み合い、重なり合うお互いの体。多くの人にとって、フィギュアスケートのカップル種目では二人の化学反応とラブストーリーの匂いが大きな魅力になっている。

 しかし先日の北京冬季五輪に出場した中には、そうしたお決まりのストーリーにうんざりしている選手がいる。

 北京五輪のフィギュアスケートには、米国のマディソン・チョーク(Madison Chock)とエヴァン・ベイツ(Evan Bates)のように、実際に恋人同士のカップルも出場した。二人の絆は周囲から見ても明らかで、演技の原動力にもなっていた。アイスダンスに出場した二人は、演技を終えると抱き合い、リンクで長いキスを交わした。

 彼らはまずコンビを結成し、5年たってから恋人として付き合うようになった。こうしたおなじみのストーリーを、ファンやメディアは他選手についても思い描こうとする。

 しかし、ペアで金メダルを獲得した中国の隋文静(Sui Wenjing)と韓聰(Han Cong)は、二人は恋人ではないと繰り返し否定している。うわさは根強いが、10代の頃からコンビを組む韓について、隋は「もう一人の父親」と呼んでいる。

 専門サイト「Rocker Skating」で、フィギュアスケートの分析を行っているジャッキー・ウォン(Jackie Wong)氏によれば、カップル種目の選手が実際に付き合っているケースは、人々が思うほど多くないという。ウォン氏はAFPに対して「特に欧米のメディアは交際関係だと書き立てるが、良い友人同士の延長であることが大抵だ」と話した。

 日本代表として、妻の小松原美里(Misato Komatsubara)とアイスダンスに出場した小松原尊(ティム・コレト、Tim Koleto)は以前、「リンク内の関係からリンク外の関係に発展する流れは、自然で徐々にだった」と話しているが、逆の道をたどる選手もいる。

 アイスダンスで銅メダルを獲得した米国のマディソン・ハベル(Madison Hubbell)/ザカリー・ダナヒュー(Zachary Donohue)組は、結成からすぐに付き合い始め、恋人としては2年半後に別れたが、「さよならは言えなかった」ためコンビを継続。ハベルは後に、こちらも別の選手と北京大会のアイスダンスに出場したアドリアン・ディアス(Adrian Diaz、スペイン)と婚約した。