■「別の物語」つづる選手たち

 ウォン氏は「良い関係にはさまざまな形があり得る。過去には男女のロマンチックな関係が圧倒的に優先されてきたというだけだ」と指摘する。

 アイスダンスに出場したチェコのナタリエ・タシュレロバ(Natalie Taschlerova)とフィリップ・タシュラー(Filip Taschler)は、妹と兄という間柄だった。二人はメダルを争うような選手ではなかったが、平昌冬季五輪では米国のマイア・シブタニ(Maia Shibutani)/アレックス・シブタニ(Alex Shibutani)組がアイスダンスの銅メダルを獲得し、血のつながったコンビでも勝てることを証明した。

 別の変化としては、性的少数者(LGBTQ)の代表選手が増えている状況もある。

 ガブリエラ・パパダキス(Gabriella Papadakis)とのペアで北京五輪のアイスダンスを制したフランスのギヨーム・シゼロン(Guillaume Cizeron)は同性愛を公表している。

 ペアに出場した米国のティモシー・ルデュク(Timothy Leduc)は、フィギュアだけでなく、冬季五輪全体で初めてノンバイナリーを公表している出場選手になった。

 ルデュクは、フィギュアのカップル種目では「『ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)』的なストーリーをよく目にする」と話しつつ、「ロマンチックなプログラムを滑ること自体は何も悪くないが、そればかりになって、他のストーリーが入り込む余地がないときがある」と語った。

「だから僕らは別の物語を表現したいと思っている。フィギュアスケートでも、そうした別のストーリーがもっと語れるようになっていけばうれしい」 (c)AFP/Rebecca BAILEY