【1月15日 東方新報】2月4~20日に行われる北京冬季五輪。表彰台に立つ選手に贈られるメダルをデザインした中国・中央美術学院(Central Academy of Fine Arts)オリンピック芸術研究センターの杭海(Hang Hai)さんが中国メディアに対し、メダルにまつわる「秘話」を明かした。

 杭海さんのチームは2008年北京夏季五輪のメダルをデザインし、五輪史上初めてメダルに翡翠(ひすい)を使った。中国古代の翡翠の玉璧(中心に穴をあけたドーナツ状の装飾品)をイメージしたものだ。「厚さ6ミリのメダルを高さ2メートルから落としても傷がつかないようにするのが、国際オリンピック委員会(IOC)の条件。翡翠は割れやすいため、試験の過程は苦行のようでした」と振り返る杭海さん。金、銀、銅と翡翠の間に宇宙事業に使う素材を緩衝材として補充することで条件をクリアした。

 冬季五輪でもデザインを担当することになったが、外部に情報を漏らさないため、杭梅さんのチームはメダルのことを暗号で「月餅(Yuebing、げっぺい)」と呼んだ。中秋節(旧暦の8月15日)に家族で食べる中国伝統の食べ物で、メダルを収納する箱も「月餅箱」と呼んだ。杭海さんは「この1年間、毎日のように『月餅』の議論をしていたので、家族は私たちが本当に月餅のデザインを考えていると勘違いしていました」と笑う。

 杭海さんたちはメダルのデザインを4種類作り、そこから最終案を絞っていった。また、夏季大会に比べ冬季大会は選手の服装が多いため、メダルが小さく見えない大きさを考え、最終的に8.7センチに決定。メダルを首からかけるリボンの長さも調整に腐心した。

 北京冬季五輪のメダルは、2021年10月26日の大会100日前イベントで発表された。愛称は、中国語で「心を一つに団結する」という意味の「同心(Tongxin)」。メダル中心部にあるオリンピックリングを5つの同心円が囲み、氷や雪、祥雲といった中国伝統の模様が描かれている。夏季大会のメダルに翡翠を使ったのに続き、今回はデザインで翡翠の玉壁をイメージした。五輪史上初めて夏季・冬季大会を開催する「双奥之城(ダブルオリンピックシティー)・北京」を体現したメダルとなっている。

 メダルのリボンは生糸織りの技術を使い、メダルを収める箱は漆と竹を主な材料として作った。中国の伝統要素を織り込むと同時に、自然の素材を使うことで、環境に負荷をかけない「グリーン五輪」という今大会の理念を表している。

 大役を果たした杭海さんは「表彰台でメダルをかけられる選手たちの笑顔を楽しみにしています」と話し、大会を待ち望んでいる。(c)東方新報/AFPBB News