【1月29日 AFP】ラトビアの青みがかった牛はかつて希少だったが、今では地方に行けば、茶色や白黒のまだら模様の牛に交じって草を食べている姿を目にするかもしれない。

 青い牛は、旧ソ連時代には絶滅寸前に追い込まれていたが、この数十年で、ラトビアのアイデンティティーを示す意外な象徴として復活した。

 カルベン(Kalvene)村にあるチルリ(Ciruli)動物公園のアーニス・ベルグマニス(Arnis Bergmanis)園長は、「繁殖に携わることができてうれしいです」と、青い牛の赤ちゃんの様子を確かめながら語った。

 旧ソビエト連邦下では、牛肉や乳製品の大量生産が重視されて一般的な牛が好まれ、青い牛は絶滅寸前に追い込まれた。しかし、1970年代に「ザ・ブルー・ワン(The Blue One)」という舞台劇が人気を博し、青い牛は、失われつつあったラトビアらしさの象徴となった。

 国内の生息数は2000年にはわずか18頭だったが、現在は純血種と交配種を合わせて約1500頭に。もともとはクルゼメ(Kurzeme)地方のバルト海(Baltic Sea)沿岸部にしかいなかったが、今では中部でも増えてきた。

 地方では青い牛を観光の目玉にしているところもあり、農家は牛の群れの中に青い牛を加えている。ベルグマニス氏によると、青い牛は母性本能が強いとされ、母牛がいない子牛がいれば、その色にかかわらず、自分の子として面倒を見るようになるという。

 言い伝えによると、牛の青い色は原産地の海に由来するとされている。だが実際は、生まれた時の毛の色はベージュに近く、その後すぐに青みがかっていき、成長するにつれて色が濃くなる。

 色素は筋肉組織にも影響し、肉の色は極めて濃い。牛乳は、ホルスタイン種よりとれる量が少ないが、栄養価は高い。

 青い牛に関する協会の代表を務めるダイガ・シムケビツァ(Daiga Simkevica)氏は、「青い牛は強くて丈夫で、世話をあまり必要とせず、一年中戸外で生きていけます。他の牛なら耐えられないような冬の間もです」と話した。

 今後は、固有の遺伝子を特定したいとしている。(c)AFP/Imants Liepinsh