【12月27日 CNS】米ボストン市(Boston)の呉弭(ミシェル・ウー、Michelle Wu)市議は11月上旬の選挙で市長に選ばれた。ボストン市200年以上の歴史で中華系米国人の女性が市長に就任するのは初めて。このニュースは世界の中華圏で話題となり、中国国内でも「呉弭旋風」を巻き起こしている。

 華南師範大学(South China Normal University)政治・行政管理学院副院長で政治学教授の万暁宏(Wan Xiaohong)氏は「華僑はこれまで居住国で政治参加への意識や熱意が薄く、『エコノミックアニマル』『サイレントグループ』とみなされてきたが、21世紀に入ってからは多くの華僑が政治参加に積極的となり、選挙にも参加するようになった」と説明。華僑人口が増加したうえ1人1人の所得水準や教育水準が向上し、人材が多様化した影響があると分析する。また、中国の経済発展が進むにつれて華僑の自信も高まり、居住国の政治活動への参加に積極的になってきているという。

 華僑の政治進出により、三つの大きな変化が起きている。第一に、居住国の主流社会において華僑の政治的イメージが「観客」から「参加者」へと大きく変化した。第二に、華僑社会全体の利益及び個人の利益がより守られている。第三に、居住国で華僑の定住化が進み、地域社会へ溶け込み始めている。

 華僑の政治参加はすでに東南アジアにおいては浸透しており、特にシンガポール、マレーシア、タイでは地域社会に大きな影響を与えている。米国やカナダでも政治的影響力はますます上昇し、欧州では英国、フランス、ドイツ、イタリアを中心に華僑の政治参加が始まっている。

 一方、人口規模で考えると、華僑の政治参加はまだまだ低い。米国の下院には3人の中華系米国人の議員がいるが、華僑人口から考えると少なくとも7人はいる計算だ。カナダの下院は9人の中華系カナダ人の議員がいるが、やはり華僑人口に比例すると少なくとも18人となる。アメリカやカナダのインド系住民の政治参加と比べても大きなギャップがある。

 万暁宏氏は「華僑が集中している地域では政治参加はしやすいが、それ以外の選挙区では言語、文化、人種差別などの壁を乗り越えなければならない」と指摘する。

 華僑の政治参加は地域社会における華僑の地位向上の証しであり、地域社会に溶け込むための重要な一歩でもある。華僑の正当な権益を保護・促進し、居住国と中国との経済関係、文化交流を促進する意義を持っている。(c)CNS/JCM/AFPBB News