石炭火力「廃止ではなく削減」 COP26文書トーンダウンさせたインドの内情
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【11月19日 AFP】インドは、首都ニューデリーが有害なスモッグに覆われているにもかかわらず、国連(UN)気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、脱石炭宣言の表現をトーンダウンさせるよう働き掛けた。インドは地球の未来よりも自国の経済成長を優先させていると専門家は指摘する。
13日に英グラスゴーで閉幕したCOP26では、世界第3位の二酸化炭素(CO2)排出国であるインドは中国と組んで、化石燃料に関する合意の文言を和らげた妥協案を成立させた。その結果、締約国は火力発電での石炭使用を「段階的に廃止する」のではなく、「段階的に削減する」という文言が盛り込まれた。
「汚れたエネルギー」に対する意欲的な規制にインドが抵抗するのは、好況を維持し、同国の貧困層数億人を救済するために、安価な燃料を必要としているからだ。
「わが国には、基本的で最低限度の生活水準にも達していない人々が大勢います」と気候変動の専門家サムラット・セングプタ(Samrat Sengupta)氏はAFPに語った。ニューデリーが本拠の環境保護団体「科学環境センター(Centre for Science and Environment)」に属している。
インドでは、この10年で石炭消費量がほぼ倍増し、石炭燃料は電力供給の70%を担っている。石炭消費量でインドを上回っているのは中国だけだ。
ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は、石炭火力だけに依存しない政策に取り組んでいるが、COP26では、カーボンニュートラル(炭素排出量の実質ゼロ化)を2070年までには達成するとの目標を示すにとどめた。これでは中国より10年、他の主要排出国より20年も後れを取る。
しかし、早急に決定的な行動を起こさなければ、インドのCO2排出量は今後激増し、各国による地球温暖化対策も水泡に帰すと専門家は警告する。
化石燃料に依存しているインドでは、その影響はすでに深刻な形で表れ、毎年冬になるとニューデリーは厚い灰色の煙に覆われる。
COP26の代表団が地球規模の気候対策について最終合意を進めている頃、デリー首都圏当局は子どもたちを外に出させないため1週間の学校閉鎖を発表した。