■「おそらく外国に行く」

 ブルガリア政府は、炭鉱地帯を造成して工業団地を造る国営企業を立ち上げ、炭鉱労働者を再雇用する計画を提案している。しかしディネフさんの願いは、閉山の時期を自分が定年を迎える「30年先まで遅らせる」ことだ。

 ディネフさんは最近まで炭鉱のチームリーダーになることを希望していた。昇進を目指し、ソフィアにある鉱山・地質大学のオンラインコースを受講し始めていたほどだ。

 しかし今は別の計画を思い描いている。共産主義体制が1989年に崩壊して以降、より良い機会を求めて西欧諸国へ渡った多数のブルガリア人と同じように「おそらく外国に行くと思う」と言う。

 軍の兵士として500レバ(約3万3000円)の月給を受け取っていたディネフさんは、倍の額を提示されて炭鉱へ移った。父親も31年間、炭鉱で働いていた。

 現在は1日12時間、設備の修理をしている。月給は1500レバ(約10万円)。EUの貧困国ブルガリアでは平均水準だ。それでも貯蓄をして両親や妻、10歳の娘のために家を建てることができた。果物や野菜を育て、ニワトリやウサギを飼っている。だが、大きなプールを持つ夢は宙に浮いた。