【6月30日 AFP】世界で計画されている石炭火力発電所の8割を中国や日本などアジア5か国が占めており、気候変動対策の目標達成を脅かしているとする報告書が30日、発表された。

 英シンクタンク「カーボントラッカー(Carbon Tracker)」の報告書によると、中国、インド、インドネシア、日本、ベトナムが建設を計画する石炭火力発電所は600件以上、総発電能力は300ギガワットを超える。これは日本の総発電能力に相当する。

 報告書は、再生可能エネルギーをより安く利用できるにもかかわらず、新たな石炭火力発電所の計画が進められていることは、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」で掲げられた、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるという目標達成の脅威となっていると指摘している。

 専門家らは、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を発生させる石炭の使用を段階的に停止することが、その影響が著しく加速すると予測されている気候危機との闘いにおける鍵となるとしている。

 だが、アジア太平洋地域の多くの国は長年、経済発展のため化石燃料に依存してきた。このため、欧米諸国がよりクリーンなエネルギーへの移行を加速させる中、これらの国々では移行が進んでいないのが現状だ。

 英石油大手BPのデータによると、2019年の世界の石炭消費の4分の3以上をアジア太平洋地域が占めていた。

 カーボントラッカーによると、世界最大の石炭消費国・温室効果ガス排出国である中国が、新たな石炭火力発電所計画の数でも1位となっている。進行中の発電所は386件で、総発電能力は187ギガワットに上る。

 習近平(Xi Jinping)国家主席は、2060年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現する目標を掲げている。

 石炭消費2位のインドでは、92件の石炭火力発電所建設計画があり、総発電能力は60ギガワットとなっている。インドネシアは107件、ベトナムは41件、日本は14件。

 報告書は、環境への懸念にもかかわらず、政府はロビー活動や産業保護、安定的な電力供給への懸念などから、新規石炭火力発電所の計画を継続していると指摘している。

 だが、太陽光や風力など再生エネルギー発電のコストは下がっており、将来的には世界の大半の地域で石炭火力発電のコストを下回るとされており、石炭火力発電所の新設にもはや経済的合理性はないという。(c)AFP/Sam Reeves