中国で宅配便の伝票がヤミ売買される 1枚35円、個人情報悪用した詐欺発生
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【11月9日 東方新報】中国で宅配便の伝票が闇ルートで売買され、社会問題となっている。日本の宅配便と同じく伝票には住所や名前、電話番号が明記されており、詐欺事件も起きている。
「わずか30分の間に16万元(約283万円)をだまし取られてしまった」
ある女性がインターネットに投稿した体験談が最近、中国で話題となった。詐欺事件の発端は、宅配便の社員を名乗る男から「あなた宛ての荷物を紛失してしまった。あなたの銀行口座に賠償金を払いたい」と電話を受けたこと。男は彼女のフルネーム、住所、電話番号を正確に知っていた。警戒心を解いた女性は指示通りにスマートフォンにアプリを入れたりするうちに、現金を振り込む手続きをしてしまっていた。女性はしばらくして詐欺に気付いて警察に通報。2日後には「紛失」したはずの荷物が自宅に届いたという。
中国メディアによると、インターネット上では、宅配便の伝票を撮影した写真を売買しているサイトが複数存在している。違法の疑いが強いサイトはプラットフォーム企業が削除しているが、「『材料』あります」と隠語で売買を呼びかける手口が多い。ある業者は客を装った新聞記者に「何の伝票が欲しい? 衣服、靴、食品、電子たばこ、化粧品、時計、ネックレス、何でもあるよ」と説明。「日用品の伝票なら1枚2元(約35円)、衣服なら1枚2.5元(約44円)、化粧品やスキンケア、ベビー用品なら1枚2.7元(約47円)」と価格が細かく分かれており、理由は「受け取り主の経済力を反映しているため」という。注文があった当日の「新鮮採れたて」伝票は値段が上がる。伝票の入手方法を尋ねると、「宅配便の店舗の責任者は1日5000個の荷物を扱うから、いくらでも手に入る」と話し、店舗からの情報横流しを示唆した。
今年4月には河北省(Hebei)邯鄲市(Handan)の警察が、宅配便の個人情報を不正入手した容疑者を摘発した。容疑者は宅配便会社の社員にわいろを渡し、社内システムにログイン。8000人の個人情報にアクセスし、海外のグループに転売していたという。浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)では、宅配便の個人情報を盗んだ容疑で警察が9人を逮捕、伝票の写真約2万枚を押収した。このグループは宅配便会社で臨時社員として働き、伝票情報を入手していた。
こうした情報漏えいや詐欺は以前から問題となっており、中国の一部の宅配業者は2017年、伝票に利用者の名前や電話番号を記入せず、QRコードで読み取る方法を導入していた。だが、配達方法が煩雑になるため、現在ではほとんど立ち消えとなっている。
しかし、2018年に施行された「宅配便暫定条例」では、宅配便企業はユーザーの情報を適切に管理し、有効なセキュリティーシステムを講じるよう要求している。さらに今月1日に施行されたばかりの「個人情報保護法」では、組織や個人が他人の個人情報を不正に収集、取引などしてはならないと明記している。
中国政法大学(China University of Political Science and Law)通信法研究センターの朱巍(Zhu Wei)副所長は「個人情報を扱う企業は暗号化、非識別化などのセキュリティー対策を採らなければならない。これはサービスでなく法的な義務だ」と指摘している。
中国の2020年の宅配便取扱件数は前年比31.2%増の833億6000万個で、7年連続世界一。誰もが宅配便を使うのが当たり前となっている。11月11日には毎年恒例の世界最大級のオンラインショッピングイベント「双11(ダブルイレブン)」が行われ、これから大量の宅配便が流通する。情報漏えい防止や詐欺対策は急務となっている。(c)東方新報/AFPBB News