【10月30日 東方新報】中国で一時ほとんど姿を消していた国産炭酸飲料が再び人気となっている。中国の炭酸市場は長年、コカ・コーラ(Coca-Cola)とペプシコーラ(Pepsi-Cola)の2強に牛耳られていたが、時代の波に乗って復活を果たした。

 中国では1920年代に複数の国産炭酸メーカーが誕生しており、炭酸飲料の歴史は古い。1980年代には瀋陽市(Shenyang)の「八王子」、上海市の「正広和(Aquarius)」、北京市の「北冰洋」、青島市(Qingdao)の「崂山可楽(Laoshan Cola)」、武漢市(Wuhan)の「二廠汽水」、重慶市(Chongqing)の「天府可楽(Tianhu)」など全国に8大メーカーがあった。このうち「中華版ファンタオレンジ」というイメージの「北冰洋」は政府機関から老字号(老舗企業)の認定を受け、旧暦の大みそかに放送されるテレビ番組「春節聯歓晩会」の第1回放送(1983年)でゲストのテーブルに並べられた。

 一方、中国が外資企業に門戸を開く改革開放政策を始めると、コカ・コーラとペプシコーラが中国に進出。1990年代、海外の先端技術や経営ノウハウを学ぼうとそれぞれの国産メーカーがこの2社と提携するが、2社に主導権を握られ、独自ブランドが衰退してしまった。結果、コカ・コーラとペプシコーラで中国の炭酸市場の8割を占める2強状態が長年続いた。

 その後、「北冰洋」はペプシコーラと粘り強い交渉を重ね、経営権を取り戻して2011年に生産を再開。武漢の「二廠汽水」も2017年に復活を果たし、他のブランドも復刻版が相次いだ。

 そしてこの2、3年で国産炭酸飲料の需要が一気に増加し、スーパーの飲料コーナーでは半分以上を国産ブランドが占めることも珍しくなくなった。かつてはガラス瓶入りのみだった商品を缶飲料やペットボトルも生産し、レモン味など新しい種類を売り出し、時代に対応したのが成長の一因。また、新興メーカーの「元気森林(Yuanqisenlin)」が無糖炭酸水を発売して大人気となると、他の国産メーカーも「糖類ゼロ、脂質ゼロ、カロリーゼロ」をうたった炭酸水を発売。生活が豊かになり健康意識も高まった中国人の嗜好(しこう)と結び付いた。さらに外国製品より国産品を好む「国潮」ブームが若者を中心に広がり、国産メーカーを後押しした。こうした流れに乗り、西安市(Xi’an)の老舗炭酸ブランド「冰峰」は深セン証券取引所への上場を計画している。

 中国ではミルクティーをはじめとするティードリンクが大人気となっており、売り上げの伸び率は炭酸市場を上回っている。中国の飲料業界は激しい競争を繰り広げているが、全体の市場は拡大を続けており、国産炭酸メーカーも存在感を保っていくとみられる。(c)東方新報/AFPBB News