【10月31日 東方新報】中国の60歳以上人口は総人口の18.7%にあたる2億6000万人に達している。その高齢者を狙った詐欺が横行しており、中国メディアが悪質な手口を紹介している。高齢者の知識が乏しいデジタルデバイド(情報格差)や孤立感につけ込む事例が多い。

「自宅を担保にして高利回りの資産運用をしましょう」というのは典型的な詐欺の手法だ。中国では庶民でも株の購入や不動産投資などに熱心な人が多い。詐欺グループは高齢者に「あなたも資産運用を考えた方がいい」と架空の話を持ちかけて不動産を抵当に入れさせ、最初だけは利益を与えた上で現金を持ち逃げする。高齢者は大金を失った上、自宅も奪われてしまう。

 シニア向けツアーが増えている中、詐欺的商法のツアーも目立つ。「雲南省(Yunnan)への秘境ツアー、4泊5日で800元(約1万4261円)」という格安旅行の広告につられて参加してみると、宿泊施設や食事の水準が低く、みやげ物売り場などに案内されて市場価格の何倍もの値段で品物を購入させられた事例があった。青島市(Qingdao)の旅行会社は「1000元(約1万7826円)の会費を払えば旅行カバンをプレゼント。海南島への無料旅行もできる」と宣伝し、約200人の高齢者から計20万元(約357万円)を集めて行方をくらました。

 中国の人気俳優・靳東(Jin Dong)さんをかたった詐欺はニュースで大きく取り上げられた。靳東さんを名乗るネットユーザーを本人と思い込んだ高齢女性が、「私を応援してほしい」と頼まれて高額グッズを購入したり現金を送金したりした。パートナーを亡くした1人暮らしの高齢男性に若い女性が「身の回りの世話をする」と近づき、時間をかけて疑似恋愛のような関係を築き、最後は財産をむしり取る詐欺も報告されている。健康への不安をあおり、「何にでも効く」というニセ薬や健康食品を売りつける詐欺商法もある。

 中国人民大学(Renmin University of China)法学院の劉俊海(Liu Junhai)教授は「詐欺師は高齢者の情報力の弱さや孤独感を利用して一獲千金を狙っている」と指摘。高齢者の孤立を防ぐ取り組みが必要だとしている。

 金融詐欺でかつて100万元(約1783万円)をだまし取られた経験のある80歳の女性、趙銀光(Zhao Yinguang)さんは「自分の周りで同じ被害者を出さない」と考え、地元の山東省(Shandong)済南市(Jinan)で約150人の高齢者を集めて「詐欺防止団」を結成。さまざまな活動で4年半の間に約200人を詐欺の手口から守り、計1000万元(約1億7827万円)近い被害を防いだ。

 河南省(Henan)鄭州市(Zhengzhou)では、73歳の張思如(Zhang Siru)さんが約200人のシニア世代に呼びかけて詐欺防止を訴える演劇を公演した。張さんは「最も大事なのは、高齢者を1人にさせないこと。自分だけでなく他人も助けることが重要だ」と話している。行政や警察が啓発活動や取り締まりを強化しているが、高齢者自身が知識と意識を高めることが最も詐欺に対抗する手段といえる。(c)東方新報/AFPBB News