■すべて無料の出張診療

 この医療モデルは成功を収め、米ハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School)などによる数多くの研究対象にもなった。

 余分なサービスを省き、大勢の患者を次々に治療していく運営方法が真価を発揮するのは出張診療だ。インドの人口の7割近くは農村部に住んでいる。

「アクセスが最大の問題です。だから治療を受けに来る人々を待つのではなく、こちらから出掛けて行くのです」とラビラ氏はAFPに語った。

 ベンカタチャラム・ラジャンガム(Venkatachalam Rajangam)さん(64)も、無料の出張診療の恩恵を受けた一人だ。

 マドゥライ市から約240キロ離れた村の食料品店で働いていたが、客の払う金が見えなくなって仕事を辞めた。階段や夜道でつまずくようにもなった。村の近くで行われた出張診療の検査で、左目に白内障が発見された。

 ラジャンガムさんは約100人の患者と共にバスで、アラビンド病院が運営する仮設診療所へ運ばれた。食事と睡眠用のマットも無料で与えられた。

「15分もたたずに全てが終わりました」。包帯を外されたラジャンガムさんは語った。「一銭たりとも払う必要がなかった。目を創造してくださったのは神様だが、視力を取り戻してくれたのはここの人たちだ」と感謝しながら両手を合わせた。