【10月13日 東方新報】世界一の宅配大国・中国で、大手宅配企業の中通快逓(ZTO Express)、圓通速逓(YTO Express Group)、韻達股份(YUNDA Holding)」、申通快逓(STO Express)、百世(Best Expess)、極兔速逓(J&T)の6社は、9月から送料を1個あたり0.1元(約1.7円)引き上げた。宅配員の賃金アップが目的という。

 中国の宅配便は毎年100億個以上のペースで増え続け、2020年は833億個に達した(日本は2019年で43億個)。中国だけで世界の宅配便の6割を占め、7年連続世界一となっている。右肩上がりの取扱件数により人手不足の問題が浮上し、配達員の確保や待遇改善のため送料の値上げを決めた。

 一部の宅配員の月収は1万元(約17万4255円)を超えるが、5000元(約8万7127円)未満も多い。デリバリーフード配達員の方が平均収入は高いため、転職する人も少なくない。1日当たりの宅配便の配達数は新人で約100件、ベテランで約200件。送料値上げにより1か月で300〜600元(約5227~1万455円)の収入増が見込めるという。

 中国では、年間で最大のインターネットセールである11月11日が近づいている。独り身のイメージがある「1」が4つ並ぶ「独身の日」と呼ばれ、ネットショッピングで「自分へのごほうび」を買うセールとして当初は始まったが、最近は多くの市民が爆買いする日となり、「ダブルイレブン」と呼ばれている。販売業者はこの日に合わせて目玉商品を打ち出したり、大幅な値下げをしたりする。最も多くの宅配員を必要とするため、とりわけ人手の確保が急務となっている。

 宅配便が急増する一方、大手宅配企業の収益率は減少傾向にある。統計によると、2010年の宅配便の平均単価は1個あたり24.5元(約426円)だったが、2020年には10.5元(約182円)にまで減少している。宅配業界の激しい価格競争は、中国の流行語で「内巻」と呼ばれている。「限られた世界での過当競争」という意味合いで、ひと言で言えば「つぶし合い」だ。送料値上げは、宅配業界の「共倒れ」を避ける狙いもある。

 ただ、現場の配達員からは「配達が少し遅れたり、客からクレームが来たりするとすぐに罰金を取られる。この現状では、賃上げされても額面通りに収入は増えない」と不満の声が上がっている。ユーザー側も「過当競争や宅配便の数が増えている影響で、注文した品物がすぐ届かないなど宅配サービスの質が低下している。それなのに、賃上げのため送料を上げると言われても納得しづらい」という指摘が出ている。(c)東方新報/AFPBB News