【9月22日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として日本政府が抗寄生虫薬のイベルメクチンの使用を推奨していると取られかねない投稿が、東京都医師会(Tokyo Medical Association)会長の会見動画付きでSNSに出回っている。だが、会長の尾崎治夫(Haruo Ozaki)氏は政府の職員ではない。現在、臨床試験が進められているが、政府は今なおイベルメクチンを新型コロナの治療薬として承認していない。

 8月22日、尾崎氏の会見動画を載せた以下のようなツイートが英文で投稿された。「東京の医師会会長が記者会見。全ての医師、全ての新型コロナ患者に#ivermectin(イベルメクチン)を推奨。日本政府は世界の中でも非常に保守的で慎重だがデータは明快だ。大ニュース」

 このような情報は北米のSNSでもシェアされ、一緒に投稿されたユーチューブ(YouTube)の動画は何万回も視聴されている。イベルメクチンが日本で新型コロナ治療薬として承認されたと報じるオンライン記事もある。

 これらの主張がネットで拡散される中、家畜用のイベルメクチンを新型コロナの感染予防や治療に有効だと誤信して服用したことによる健康被害が相次いで報告されている。

 東京都医師会は2020年12月時点で2万人余りの会員を抱える独立した組織。上部組織の日本医師会(Japan Medical Association)は、ロビー活動や政府への提言を行っている。

 ツイートに添付された動画で尾崎氏は、寄生虫による病気を予防する目的でイベルメクチンを年に1回住民に投与したアフリカの国々と、投与していないアフリカの国々を比較。10万人当たりの新型コロナの感染者・死者数を例に挙げ、「明らかに差が出ている」と述べている。

「これをもって、有効だと言えるわけではないかもしれませんが」と断った上で、「イベルメクチンは全く効かないとかいう話は、私はないんではないかと思っています」と尾崎氏は主張。しっかりした治験と検討は必要だとしながら、こう続けている。

「こういうかなり逼迫(ひっぱく)した状況下では、イベルメクチンの使用というのを、もちろん飲まれる患者さんにちゃんとインフォームドコンセントをした上ですけども、使用許可を認めていただいてもいい段階に来ているのではないかというふうに考えています」

 東京都医師会はAFPに対しコメントは見送ると述べた。