【7月8日 AFP】新型コロナウイルスの感染が拡大するインドネシアで、保健当局の警告にもかかわらず、抗寄生虫薬「イベルメクチン」が新型コロナの「奇跡の治療薬」として人気を集めている。著名政治家やソーシャルメディアのインフルエンサーも勧めている。

 人口世界第4位のインドネシアは、新型コロナによる1日の死者が増え、パンデミック(世界的な大流行)が始まって以来、最悪の感染拡大に見舞われている。

 イベルメクチンは、ソーシャルメディアで盛んに新型コロナの治療薬として取り上げられていることもあり、全国の薬局で売り切れとなっている。

 首都ジャカルタの市場の医薬品販売グループ代表、ヨヨン(Yoyon)氏は、在庫不足により、1瓶約17万5000ルピア(約1300円)だった価格は、約30万ルピア(約2300円)にまで高騰したと話す。「買い求める人が多く、今は在庫を切らしている」

 インフルエンサーがオンラインでしきりにイベルメクチンを称賛することも需要を押し上げた。

 ツイッター(Twitter)で35万人のフォロワーがいる自称「総合健康管理医」のレザ・グナワン(Reza Gunawan)さんは、「イベルメクチンは、さまざまな医師によってパンデミックを終わらせる安全で有効な鍵の一つだとされており、多くの科学的証拠がある」と投稿した。

 反ワクチンと陰謀論にあおられ、ブラジルや南アフリカ、レバノンなどさまざまな国でイベルメクチンの需要が急拡大している。

 しかし、製薬会社メルク(Merck)は、新型コロナに対する治療効果の可能性について科学的根拠はないとしており、不適切に服用した場合に起こり得る安全問題に警鐘を鳴らした。

 科学者や世界保健機関(WHO)、インドネシアも含む各国医薬品規制当局は、イベルメクチンが新型コロナ治療に有効だという信頼できる証拠に欠けると強調している。

 インドネシアの実業家で、イタリア・セリエAのインテル(Inter Milan)の元オーナーとしても知られるエリック・トーヒル(Erick Thohir)国営企業相は、国営製薬会社インドファルマ(Indofarma)が、月400万錠のイベルメクチンを製造できると示唆している。

 ただ、新型コロナに対する効果の立証にはさらなる試験が必要だとし、利用者は処方箋を得て服用するよう呼びかけている。

 一方、フォロワーが250万人いる人気のスシ・プジアストゥティ(Susi Pudjiastuti)元海洋・水産相は、「私は医者ではないが、絶望と困難に直面する中、なんでも試してみる価値があると思う」とツイッターに投稿した。(c)AFP/Agnes Anya / Haeril HALIM