■パキスタン

 1979年、軍事独裁政権を率いていたジアウル・ハク(Zia-ul-Haq)大統領は、国家の完全なイスラム化を目指して「フドゥード法(Hudood Ordinances)」を導入し、広範から批判を浴びた。

 フドゥード法は、不倫や冤罪(えんざい)、窃盗、薬物やアルコール摂取などを対象とする。シャリア法廷が、英国法を基にした刑法と並行して施行しているが、あまり利用されていない。

 2006年にはレイプや不倫をシャリア法廷ではなく、通常の法廷で裁くことを定めた女性保護法が可決された。

 現在ではシャリア法廷の判決を、通常法廷に上訴することも可能となっている。

■ナイジェリア

 ナイジェリアでは、36州のうち北部の12州ほどが刑事事件にシャリアを導入している。裁判所は切断刑を命じることができるが、執行されたことはほとんどない。

■カタール

 カタールでは、イスラム教徒のアルコール摂取や不適切な性的関係に対する刑罰として、現在もむち打ち刑が存在するが、ほとんど適用されていない。不倫に対しては、むち打ち100回が科されるとしている。

 また法律上、ムスリム女性と非ムスリム男性の不倫には、死刑を科すことも可能だ。

 だが実際には、死刑は非常にまれに殺人事件に適用されるのみで、被害者遺族が加害者に許しを与えない場合となっている。

■イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」

 イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」は正式な国家ではないが、自称「カリフ制国家」が2019年に破綻するまでは、シリアやイラクの支配地域で独自の法廷を開き、シャリアの厳格な解釈に基づいた裁判を行っていた。

 斬首や石打ち、手足の切断などの残虐な刑罰を執行し、同性愛者とみなした男性たちを建物から突き落とすこともあった。

 国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)とつながりのあるソマリアのイスラム過激派組織「アルシャバーブ(Al-Shabaab)」も、シャリアの残酷な解釈を適用している。(c)AFP